鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

190 追春の順路

2021-04-22 14:15:00 | 日記

春の終り頃は散歩や買物の道筋が少し変わる。

家々の庭に咲く晩春の花々を楽しむのが主だが、八幡宮の神苑を覗いて牡丹の取材をいつにするか咲き具合を確認するためでもある。

源平池のベンチでひと休みしながら、薫風の中でぼーっと夢幻に浸るのは癖になる。


(鶴岡八幡宮の新緑)
鎌倉の街なら長年住んでどこの花がいつ咲くか大体わかっているので、時節毎に歩くコースを変えて楽しめる。
晩春の花の順路を、写真整理の都合で八幡宮から我家まで戻る順で見ていただこう。

西御門入口にある見事な枝振りに仕立てた藤棚の門。

この藤は八幡宮の大藤より断然良い姿で、門の形と良く調和している。
藤を見るには葉の色が濃くなる寸前の若葉色が、花の紫が映えて良い。

清泉小前の葉桜となった並木道を通る。

小学校前に咲き残った遅桜と蘇芳の落花。
薄紅と薄紫の濃淡が、いかにも晩春の彩りだ。

永福寺跡の数年前の台風で倒れた木の切株の周り。

陽当たりが良くなって蒲公英が盛大に繁殖した。
丈長けた菜の花は木が倒れた後に誰かこっそり種を蒔いたようだ。

家に帰って庭の藤を剪って活け、家人へ買ってきた柏餅(私は食べられない)でひと休み。

(天青釉花入 清朝時代 三田青磁菓子皿 江戸時代)
窓を開けて薫風を入れ、爽やかな青磁系統の色で揃えてみた。
沢山の花を見てきたので、私はお茶だけでも満足できる。

牡丹桜(八重桜)を薄塩で漬けた桜湯と緑茶を合わせた桜茶。

(九谷輸出用ティーカップ 大正時代)
桜の絵柄のカップに桜茶では合い過ぎて月並みだったかも。

今回は疫病禍で楽しめたとは言い難いこの春を惜しんで、今日一日で撮った写真を多めに載せた。
その分句歌が出来ず、今晩寝る前に苦吟となるだろう。


©️甲士三郎