鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

133 花時の始り

2020-03-19 11:03:00 | 日記

東京の3月14日の開花宣言は観測史上最早だそうだ。

鎌倉では山桜や彼岸桜の種類はすでに咲きだしているが、染井吉野はもう少し遅いだろう。

例年ならこれから牡丹までの時期が、私の画業の中で最も楽しく忙しい季節だ。


---薄紅に触れるや解ける春の雪---


先週末は朝方は陽が差したものの、その後降り出した雨で咲き出した花も凍えていた。

雨だとスケッチは無理だが写真や句作には返って面白いだろうと思い、春寒の中をふらふらしているうちに霙から雪になってしまった。

鎌倉で三月中旬の雪はほとんど記憶に無い。

上の写真は近くの山裾の花。


雪は小一時間でまた雨に戻り、淡雪の名の通りもう跡形も無い。


この程度で止んでくれれば芽吹きが低温でやられる心配も不要だろう。

私も家に帰ってたっぷりの珈琲で暖まろう。

珈琲だけは買い溜めてある。


火曜日頃からは三寒四温の四温に入り、晴か薄曇りの麗かな写生日和だ。

鳥達の囀りの中で朝の浄光を探しに歩くのは昔の修道僧が神の光を求めて彷徨うのと似ていて、彷徨っている時自体がすでに至福の時と知るべきだろう。


---紫に明けゆく朝(あした)花時の 始まる街はまだ静かなる---


花時は今日はどの木が咲きそうか、明日はどこへ行こうかとせわしい日々が続く。

引き篭りの隠者にしては珍しく、活動的な季節となる。

今年は体調も良いので、若かった頃のように花を追って北国までふらつく長旅に出たいと思っていたのだが、疫病の影響で止めざるを得ない。

いつもの夢幻界の旅で我慢しよう。


---誰も居ぬ夢の途中の花の駅---


©️甲士三郎