あちこちに身内の高齢者を抱えて居ると、多くの子育てが終わったと想えば、今度はその高齢者の面倒を見てあげなきゃ~ならんくなってる。
どんだけ儲けても、多くの扶養家族のためにと消えてゆき、社員を増やして会社を大きくする代わりに、俺の場合は身内を増やすことで生きて来ておるから、つまりは死ぬまで次から次へと手のかかる身内が出てくるようで、昨日は中野の一戸建てで独り暮らしをする84になる婆様を、紅葉見物に連れ出しておった。
それぞれの家にはそれぞれの事情があるが、みな兄弟から子や孫の関係でややこしく幼稚な情景を作ってる。
ゼニカネの話、親の遺産が目当て、これが大きな原因になってる。
俺のように親の借金まで完済してやって生きて居ると、子供じみた幼稚な連中、それで終わってしまう。
みっともなく揉めるのなら、みな貧しい人たちに分けてやればエエんやないか?? 一言でカタが付く話だ。
高齢者の方も、結局はゼニカネの話をしなくて済む俺のような男に愚痴を言うようになるから、ま~ま~仕方なく聞いてあげてはいるが、そんな子や孫を見て甘やかして放置していた爺婆にも、その責任はあるわけさ。
互いに都合よく甘え合ってる家、それで終わってしまってる。
俺にはそんな甘えが微塵もないから、多くの子供らは若い時分から生きることにみな精を出すようになってる。
山の獣たちでも、そんなことは百も承知のことだが、人間の世界はどんどん哀れな醜態を繰り広げている。
笑っていいとこだ。
ということで、昼過ぎの渋滞が解消したころから、のこのこ爺ィと婆ァの車は出発した。
・・・あんたんとこの二人の孫はどっちも飛びぬけてて面白いわよね~
のんびり逆方向の渋滞を眺めながら、寄り道・産地の買い物しながら、昔話に民話や語り伝えや高齢者の笑い話ばかりで、愉しくあちこち案内してやった。
・・・さすがにどこに行っても詳しいわね~
あたりきさいさい、こちとらは毎週、半世紀、日本を歩き回って居る。
紅葉時期の富士の眺望はまたいろいろとあるが、84歳が行ける場所は限られてくる。
・・・階段400段くらいは行けるかな?
・・・あ~、もう無理ね~
・・・2キロくらいの緩やかな登りは?
・・・あ~、ちょっと厳しいわよ
・・・まったく、都会にトグロ巻いてるなまぐさ婆ァだな
で、富士を半周して、景色を堪能して毒舌の連続、刺激があって目が輝いて来たのを見て、河口湖の紅葉ライトアップは渋滞するだろうから、甲府盆地に抜けて美味い温泉鰻を喰って帰るか?
・・・あ~、それがいいわよ、一番高いのをご馳走するわよ
・・・当然とうぜん、冥途の土産に、それじゃ~そうしよう
大笑いして、山塊を越えて甲府の夜景を堪能し、さんざんに買い物も付き合ってやって、11時に戻って来た。
・・・今夜はよく眠れると思うよ
・・・そうね、ありがとう、そのまま死んでも良いわ
それは今の俺もおなじこと、またまた大笑いして車を乗り換えて、それから銀座の店に出て、一仕事、まだまだスゲ~だろうよ。
山を登ってないからな、歩いただけだから、なんということもない。
また、仕事にとりかかるっぺよ。