こ も れ び の 里

長崎県鹿町町、真言宗智山派、潮音院のブログです。平戸瀬戸を眼下に望む、人里離れた山寺です。

しがみつく

2010年08月02日 | 仏教
わが家は、みなエアコン嫌いです。
蒸し暑い夜に仕方なく除湿を稼働させるくらいで、
ほとんどエアコンのスイッチが入りません。
正直もうしまして、私はこのエアコンという文明の利器が、
とても恋しいです。
でも、そんな家族の手前、
積極的にエアコンのスイッチをオンすることがはばかれますんで、
一人こっそりと狭い事務所のエアコンを稼働させて、
極楽気分に浸る今日この頃、
心より酷暑お見舞い申し上げます。

さて、この暑さも、やがて懐かしく思えるような日がおとずれることは、
みんなわかっています。ものすごく高い確率でそれはやってきます。
季節や気温は日々変化しています。
私たちの心のはたらきも、日々、というより一瞬一瞬生まれては消え
しながら繰り返されています。じっくり変化する類の心もあります。
ともかく変化をしないものはない。モノも心も。
だから、何一つ「これっ、私のモノよっ!」ってつかみ取ることはできません。
アッという間に次から次へと変化し流れていきますから。
「あ~、まいったな~、苦しいな~、どうすんべ~」って地獄のように悩んでも、
川の水のように流れ変化していくことがこの世の当然であることがわかれば、
その感情を自分の力でコントロールすることができるんですね。

海におぼれた人を救助するとき、
一番やっかいなことは、
おぼれている人がわらをもすがる思いで
レスキューの人にしがみつくこと。
すっかり身を任せることができれば、
楽に助けることができるんでしょうが、
もう、必死でしがみつくものだから、
極めて危険。
しがみつくことが、危険を生み、苦悩を生む。

しがみつこうとせず、流れにまかせることができるようになれば、
心に余裕が生じてきます。
いっぱいいっぱいだった心のコップに、
幾ばくかのキャパができます。
このキャパが大切。
余地です、スペースです。
このスペースがあれば、もっと水が注げるし、
言い換えれば、エネルギーを生み出す場所になる。

物事にしがみつき、心の中をイッパイイッパイにしたとき、
苦しみや悩みや失敗が始まります。

「諸行無常」という言葉の意図は、
この「しがみつき」回避の生き方を示したところにあると思います。


画像は、当山末堂にポツンとあるつくばい。
なんだか、カニさんの彫刻がとても気に入ってます。
実際、本物のカニさんも周囲にウジャウジャ棲息していたりして、
これまたおもしろく。


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