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藤原 そうですね。だいたい、海のど真ん中にできるのが鳥山なんですね。でも三陸に行って歩いているとき、陸のど真ん中に鳥山ができているのを見て。びっくりしたんです。
鳥山は、今度の震災地にはあちこちにできているんです。(中略)
石牟礼 一種類の鳥ですか?
藤原 カモメとかウミネコです。カモメやウミネコが陸で鳥山をつくるというのは、こんな奇妙な光景はないですね。
石牟礼 何にたかっていたんですか。
藤原 たかっているというよりも、カモメのような鳥は鼻がきくんです。なぜかというと、カモメはスカベンジャー(残飯整理)といって、きれいな姿をしているけれども汚いものを食べるんですよ。残飯とか腐りかけの魚だとか。だから、港につくわけですね。漁師がすてるでしょう、いろいろなものを。それを食って生きているのがカモメなんですよね。漁師が捨てる残飯に、ほぼ寄生している。そこが全部やられてしまったから、漁師も何も捨てなくなっちゃったし、もう腹を空かしっちゃって。ただ、鼻はききますよね。だから、陸から流れてきている死臭を頼りに飛んでいったんですね。鳥山ができているところの真下に行くと、死臭がすごかったです。死体というものは一ヶ所に集まりますから。ただ、埋もれているから、姿がない。瓦礫の中に埋まっているから。
ぼくは、カモメのああいう声を聞いたのは初めてだった。カーッ、カーッと、すごい声でみんな鳴いているんですよ。カモメの声というのは、ほんとうはすごくやさしいんですね。ピューピューという小さな声で。これが、みんなギャッ、ギャッっていっているんですよ。焦っているんですね。臭いはすれど姿が見えないから。腹は空いているし。
石牟礼道子*藤原新也 『なにだふるはな』より 河出書房新社
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この『なみだふるはな』という対談集一冊を読んで、こんなところを抜粋するなんてのは無粋な話なんだろう。
ここでは、濃密な太古からの自然と人間の交感が語られ、自然への畏怖と感謝の感情に満たされた人々のたたずまいや日々の交流が多く語られている。
そのことによって、水俣そして福島で何が起きたのかが、結果的にあぶりだされるようになっている。
意図したものじゃないだけに、この本の存在は重い。
藤原新也の以下の言葉が印象的だった。
「真と善と美という人間の生命の側面は悪の鑢(やすり)によってさらに研ぎ澄まされもする。今ある望みです」
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