ほとほと通信

89歳の母と二人暮らしの61歳男性の日記。老人ホームでケアマネジャーをしています。

気質と適性

2016-02-17 | ほとほと日記
今日は仕事はお休みでした。


昨日も書いた、有料老人ホーム元職員が入居者殺人容疑事件。
容疑者の事情聴取の言葉が、少しづつ聴こえて来ます。
初めに確認しておかなければならないことは、今回の恐ろしい事件と今後出てくるであろう「介護職場でのストレス」とは、まったく別次元の問題だと言うことです。
「無力の相手を転落死させる」などということが出来るのは、深刻な人格障害者だけです。
仮に、どんなに職場が悲惨な労働環境で、精神的に疲れ果てていたとしても…です。


私は以前は障害者施設で働いたこともあり、今まで多くの福祉現場の労働者に出会ってきました。
その経験から、福祉現場の労働者には適性があると考えるようになりました。
もっとも重要な適性は「優しさ」です。それは「どんな条件下であっても、相手に直接的な危害は絶対に加えない」という気質であり、相手の痛みに対する感受性の強さです。
密室で重度認知症の高齢者と接することが多い高齢者介護の現場では、なおさらこれが第一だと思っています。

しかし、往々にしてそういう適性を備えていない労働者がいるのも現実です。
慢性的な人手不足の現場に於いては「最低限の技術があれば誰でも来てほしい」というのが実態で、適性云々は後回しになっているのです。



もちろん、今回の事件を機に、高齢者介護業界の問題点が大いに語られて欲しいと願っています。
私は、ビジネス誌などでしばしば書かれる「介護ビジネス」という言葉に大いに違和感を抱いています。
特に認知症高齢者の介護は、全くビジネスに馴染まないものだと確信するようになりました。
経営者が利益を上げるためにまず考えるのは、人件費の削減です。
しかし、人件費を削れば間違いなくサービスが低下し、安全性がおろそかになります。

有料老人ホームに介護保険が適用されるようになってから、ビジネス誌などは「介護ビジネスの寵児」として何人かの経営者を取り上げ、もて囃してきました。
例えば元コムスン会長の折口雅博氏であり、ワタミの渡辺美樹氏です。

そして、今回の事件の舞台となった施設の親会社の会長も、またその一人でした。
つい数年前まで「一人一人の入居者にあったオーダーメイドケア」といった「理念」を力強く謳う姿が、たびたび雑誌や新聞に載っていました。
結果的には、その「理念」により職員配置数を減らして安い価格で供給し、入居者数は増加の一方だったようです。

彼ら「寵児たち」は皆、弱者気質の私から見ると一目でサディスティックな気質…という印象です。
そして図らずも全員が、事件などが要因で高齢者介護の世界から退場しようとしています。
なぜ皆、大風呂敷にだまされるのだろう?
私は、不思議で仕方がありません。