ほとほと通信

89歳の母と二人暮らしの61歳男性の日記。老人ホームでケアマネジャーをしています。

おくりびと

2014-10-04 | 映画
今日は仕事はお休みでした。

いつものようにスポーツクラブで水中ウォーキングをしたり病院に行ったりした後、夜、映画の『おくりびと』をBS放送で観ました。
この作品は2008年の作品ですが、翌年の米アカデミー賞で外国語映画賞を受賞して、それから日本で大ヒットしました。
私も封切り当時に観ていますので、約五年ぶりの再見でした。
五年前に比べても今回は心に残る鑑賞となりました。

作品は、東京のオーケストラのチェロ奏者だった主人公が、オーケストラの解散とともに失職して妻とともに郷里の秋田に帰り、ひょんなことから納棺師になる…というストーリーです。
主人公は三十代後半くらいですが、それまで一度も遺体を見たこともなく、初めは恐怖や穢れの感情などに圧倒されます。
しかし、仕事を続けていくうちに「次の世」に送り出すための尊い役割だと自覚していきます。

五年前の私はすでに老人ホームの職員でしたが、「死」を忌避する感覚はこの主人公とさほど変わりませんでした。
どんなに高齢者であっても、最期はできるだけ病院に入院してから亡くなって欲しい…と内心で思っていました。
それが、二年前の四月に介護保険法の改正があり、有料老人ホームでも「看取り介護」が出来るようになって、大きく変わりました。
この二年半で十数名の方をホームで看取り、死を積極的に受け入れるようになって、つくづく「死は誰にでも訪れる自然な現象である」と感じるようになったのです。
また、自分にこの五年で色々なことがあり、両親とも老い、いよいよ「死」は身近になっています。

観終わった今、考えるのは、やはりまず両親をおくるときのことです。
何人ものご遺体を見送った私には、「遺体は尊いものだが、それ以上に大切なのは故人との思い出だ」という気持ちがあります。

そして、自分を送ってくれる人はいるのだろうか?ということ。
これは空漠としすぎて、今の私には全く見当がつきません。