トランプ政権が予算教書を提出 財政赤字を解消するカギは「民間の力」
2018.02.15(liverty web)
《本記事のポイント》
- トランプ政権は2018年度の財政赤字は増えると予測
- 経済成長による税収増と歳出削減によって、赤字は減らせる
- 日本も「富を生み出す」という発想を見習うべき
アメリカのトランプ政権はこのほど、議会に2019年度(18年10月~19年9月)の予算教書を提出した。アメリカでは予算法案をつくる権限は議会にあり、大統領には法案を提出する権限がない。大統領は予算教書として、予算の見積もりを議会に示すことになっている。
トランプ政権の歳出要求額は、国防費や公共インフラ投資、メキシコ国境への「壁建設」の費用などで前年より5%増え、4兆4070億ドル(約480兆円)となった。
歳出の増加により、トランプ政権は2018年度の財政赤字が9840億ドル(約107兆円)になると見込んでいる。
財政赤字を減らす秘策はPPP
アメリカ政府の財政赤字はすでに20兆ドル(約2180兆円)に達し、日本の2倍以上もある。アメリカ国内からは「財政赤字が膨らむ」との批判も出ているが、トランプ氏は、生活保護や高齢者向けの医療費などの社会保障費を減らし、財政赤字を減らそうとしている。
また、トランプ氏は公共インフラ投資に向けて財政出動するつもりだが、注目したいのは、その支出の抑え方だ。その秘策が、民間の活力を利用する官民連携(PPP:public private partnership)の活用である。トランプ氏は自身のフェイスブックでこう語っている。
「公共インフラに1.5~1.7兆ドル(163~184兆円)の投資をする。われわれは、官民合わせて多くのことをする。許認可にかかる期間を短くし、10年かかるところを2年、もしくは1年でできるようにする。これは、地方の公共事業にとって5000億ドルの経済効果を生み、数え切れないほど多くの仕事を与えるだろう。国や地方政府に力が戻ってくる。ワシントンは、もはや発展の障害物ではなく、あなた方のパートナーだ!」
インフラ投資にかける1.5兆ドルのうち、政府が拠出するのは10年間で2000億ドル(約22兆円)のみ。残りの約86%は、州・地方政府や民間が出資し、民間の力を活用することで、政府の歳出を減らすことが狙いだ。
州レベルでは、PPPが積極的に行われている
これまでさまざまな州で、老朽化が進んでいる公共インフラを立て直すために、PPPによるインフラ整備が行われてきた。公務員ではなく、民間企業が計画を立てるため、安価でクオリティの高いインフラをつくることができる。
例えば、ワシントン周辺のバージニア州と西海岸のカリフォルニア州は、PPPによる高速道路の建設に率先して取り組んできた。
バージニア州のダレス国際空港周辺の「ダレス・グリーンウェイ」と「首都圏環状道路HOTレーン」、カリフォルニア州の「サウスベイ高速道路」は、民間企業が計画段階から携わり、そして民間の資金で建設され、運営も民間の手で行われている。アメリカにはカーブが多くて走りづらい高速道路が多い中、PPPで造られた高速道路はまっすぐに走れるため、利用者からの評価が高いという。
トランプ氏は、州レベルで行われていたPPPによるインフラ整備を、国家プロジェクトとして行おうとしている。ここには「新たな仕事や雇用を生み出す」というだけでなく、「人や物の流れをよくすることで新たな富を生み出す」という狙いがある。
ビジネスマンとしての「富を生み出す」発想がある
トランプ政権は予算教書の中で、1.5兆ドル(170兆円)の大型減税と規制緩和、インフラ投資によって、2018~24年までの経済成長率は3.0~3.2%になると予測している。経済成長によって税収が増え、かつ歳出を削減することで、2020年以降の財政赤字は減少。28年度には、GDP比の1.1倍程度になると見込んでいる。
これに対し、日本経済新聞などは、「(経済成長率の)試算には甘さも残る」「楽観的」と厳しい見立てをしている。ただ、時間が経たなければ、その成否がどうなるかは分からない。
しかし、かつてレーガン政権(1981~89年)が、トランプ政権と同じような大型減税や規制緩和、インフラ投資などを行ったところ、国内総生産(GDP)の伸びは、1981~2005年の間で年3.4%を記録。国民一人あたりの年収は、81~07年にかけて、1.5倍に増えている。
トランプ氏の「減税や規制緩和、民間の力を活用したインフラ投資などによって、国の富を増やす」という戦略を、日本も参考にしてもよいのではないか。
(山本泉)
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