天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

パラリンピック金メダリストの訴え

2018-05-20 20:07:59 | スポーツ

成田真由美さん


今日10時から国分寺市民室内プールにおいて、成田真由美さんの講演会があった。
成田さんはアトランタ、シドニー、アテネ、北京、リオのパラリンピック5大会に出場して、合計15個の金メダルを獲得した障害者水泳の先駆者。
現在も選手であるが、講演活動を通じ障害者スポーツの周知活動に尽力しているという。
公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会理事、関東身体障がい者水泳連盟副会長などをつとめる。

彼女の障害はまず中学生のとき脊椎に入ったばい菌により下半身が使えなくなったこと。それを乗り越えて今までやったことのない水泳に取組み一ヶ月の練習で仙台大会で優勝したこと。しかしその帰路、クルマに追突されて頸椎を痛め、両手も動かない重傷を負ったこと。
病気と事故のほか別の難病がときおり起こり、そのつど手術して乗り越えてきたことなど健常者に想像できない事例をたんたんと語った。
二人の手話通訳者がかわるがわる彼女の講演を耳の不自由な方に伝えた。

成田さんは世の中が身障者のためにできていないことを訴えた。
それは施設や道具や環境といったことがバリアフリーからほど遠いことのみならず、人々の意識が弱者への配慮に欠けることを指摘した。
いろいろな事例のなかでもっとも興味深かったのは、足の悪い友人と電車の優先席に座っていたときのこと。
おばさんたちがこちらを見て非難めいたことを話しているように成田さんは感じた。
成田さんの勇気に驚いたのだが、「私たちのなにを話しているんですか?」とおばさんたちに詰め寄ったという。
すると一人のおばさんが「あなたが足の悪いのはわかるが連れの人はなんでもないのに優先席にいる」と批難した。
連れは成田さんに常日ごろ「あなたは車椅子だから障害があることがわかっていい」といっていたらしい。
連れの人はおばさんたちにズボンをめくり義足をズボッと取って見せた。
おばさんたちが驚いて「今の義足ってよくできているのね」と、自分たちの不明を詫びるわけでもなく、見当違いのことを言って逃げたという。

成田さんは他人の体のことは外見でわからないことが多い。そのことに気づくべきだという。
それはぼくも感じながら娑婆を歩いている。
電車で横の吊革を握っている人はもしかして心臓にペースメーカーが入っているかもと考えたり、色白の女学生は悪性貧血の持病があるやもしれぬ…などと思ったりする。
世の中に五体満足という人はあまりいないのではないか。小生にしても高めの血圧を薬で抑えているが、そんなことはさして日常生活を妨げない軽微なもの。

1時間の講演のあとプールで成田さんが泳ぎを見せてくれた。
練習は1日7000mほど泳ぐという。足は使えないので腕2本で泳ぐ。ターンのとき健常者がふつうにやる壁を蹴ることができず、手を壁に触れて体を回転させて向きを変え、手で掻いて掻いて壁から離れる。
このシーンを見ただけでも苦難を感じた。
上体が発達して上衣は19号を着るという。しかし下衣は9号。上衣の19号がパンパンのとき母親が「次は21号ね」というのが悪魔のささやきに聞こえると、笑わしてくれた。

現在48歳で競技生活は今年で終えるという。人々の障害への理解をめざし彼女の奮闘は続く。
理解のない人に果敢に向かって行く成田さんの勇気は凄いと思った。ぼくもそう弱者への理解が足りているとは思えない。成田さんに詰め寄られないように意識改革をしなくてはならぬ。



コメント
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