トホホおやぢのブログ.....

アンチエイジング、自転車、ダイエット、スイム、ラン等々、徒然なるままを・・・

カーボン黎明期・・・

2010-03-03 23:56:00 | 自転車事情
自転車のカーボンフレームの歴史を語る時に彼の名前を知らない人は・・・・、
Kestrelが世界で一番最初に自転車用カーボンフレームを作った事を知らない
に等しい輩だと思う

http://www.catbikes.ch/

 その名前は、ルディ・カース。キャット・チータというカーボンバイクを今でも作っている。根っからの技術屋で、その探究心を満たすためには、毎日ジャガイモだけ食べていても生きていける人間かもしれない(失礼ながら実際に会った印象だ)

 その昔、彼の事はボクのヤマハ時代の古い友人に聞かされ、その彼がなぜか突然バイク(自転車)を作り始めたので、見てやってくれと連絡があったのがキッカケだ。
 なんでそんな情報が、ヤマハ時代の友人から来たのか?実は彼は、日本人で初のオートバイロードレースの世界チャンピョン片山敬済(350CCクラス)のマシンを作った男なのだ。このエンジンは、TZ250のエンジンの1個を真っ二つに切って繋ぎ合わせて350ccにしたというシロモノ。彼はそれを作った。そして彼の才能はそれに限らず、フィアットのレース用自動車のカーボンボディの設計・サイドカーレースのボディ設計・飛行機の設計をカーボンでやったりして、その才能と経歴は多彩を極めている。そんな彼が自転車を作ったので、それなりの価値があるとボクの友人は思ったのだろう。加えて、彼は、突然CO2を発生するものの設計を止めた。すなわち自転車に専念したということだ。

 彼は、かつてオートバイを作っている日本企業のヤマハNV(オランダ)にいたので、奥様のダネさんとともに日本びいきだ。その昔は、片山選手が活躍する以前にヨーロッパのオートバイのロード選手権に挑戦した日本人、例えば後の雑誌ライダースクラブの編集長になった根本健氏等を居候させていたこともあったらしい。そんな彼らの飼っているペットの猫の名前は、”熊”と命名するくらい、こよなく歴史・文化を問わず日本のテイストを愛してくれている夫婦だ。

 彼の工房に訪問して、衝撃的だったのは、当時は気袋内圧成型法(チューブの中に風船を入れて熱硬化させる)のが、パイオニアのKestrelをはじめまだ一般的だったのだが、早い時期から彼の工房には真空釜(オートクレープ製法)があったことだ。ジャガイモしか食ってない奴になんで、そんな高価なものが準備できるんだ!?と最初は思っていたのだけれど、2日目のディナーの時に合点がいった。彼には地元の有力な医者のスポンサーだ居たようだ。その医者の自宅にディナーに招かれ、いろいろ話を聞いて、そんな関係ではないかと推測がついた。ちなみにオートクレープの場合は、気袋内圧成型法に比較して、形の自由な設計が可能であることが強みだ。(中に風船をいれなくてもいいから)その変わりに、その器材には莫大な投資が必要なのだ。

 まだ、ヨーロッパの自転車メーカーでカーボン素材なんて注目されていない頃の話だ。
でも人が良い彼は、あまり知られていないがヨーロッパの自転車業界に直接・間接的にそうとうな影響を与えたようだ。しかし極めて日本人的な(いまやこの例えは正しくないかもしれない)彼は、惜しむことなくノウハウをタダ同然で業界人に教えて、350CCのエンジンを作った時と同じように自分がオモテに出ることなくこの業界の発展に貢献した。

 実際にイタリアのメーカーで、真空釜を持っている事を確認できたのは、MURAKAとORIAの2社だけだ。そして、そこから多くの有名ブランドが製造されている。
 その中の1社は、正直にルディの功績を認め、なんてお前は彼を知っているんだ!?と驚かれ、情報源としての彼の存在をあまり公にしたくない様子だった。

 実際、彼のマシンは空力抵抗に優れ、たしかアイアンマンの世界選手権の女子(ナターシャバッドマン)で、3か4連覇をしている。 彼のマシンの優れているところは、金型に独自の工夫をして、モノコック構造なのにオーダーメイドができる点だ。それはTZ250のエンジンを1+1/2で世界チャンピョンマシンを作った技術と共通するものがあるらしい。
 残念ながら、日本のマーケットではグラン・ツールで露出の無いブランドは商品価値が高くないこともあり、イマイチ訴求しきれなかったようだが、個人的には余裕があれば是非乗って見たいバイクだ。