目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

息もできない ★★★★★

2010-12-28 20:31:04 | ★★★★★
2008年韓国映画で日本公開は今年の映画となります。
ヤン・イクチュンという俳優が初監督した作品で監督、脚本、編集、主演、製作を行ったという何ともマルチな才能を見せ付けた傑作となっております。

2010年の日本公開作品の中では最高評価を得ていることの多いこの作品をぜひ劇場で観たかったのですが、予定が合わず結局DVDを観ることとなりました。ここ最近、韓国映画を観る機会が多く、また、その傑作輩出の多さについては舌を巻くばかりです。日本映画でもこういう作品が次々と現れて欲しいのですが・・・。

ヤン・イクチュンが演じるサンフンというヤクザが出会ったキム・コッピ演じる女子高生ヨニとの出会いから次第に心を開いていくさまを描きながら展開していくドラマなのですが、非常に序盤から目が離せない作品となっております。なんせ、サンフンは終始、暴力を振るい続けます。オープニングの描写では女性を殴る男性にいきなり絡んでいきひどく殴りつけるわけですがこの一連のシークエンスでこのサンフンというキャラクターが「どういう人物であるか」を端的に描けており、非常に興味深い。更にどんどん掘り下げられていき、本来であれば共感しづらいやくざであるサンフンにどんどん引き込まれていくんですね。サンフンという暴力的な人物の中にある葛藤、父との距離、かつての悲劇が次第に描かれつつ同時並行的にヨニの過去と置かれている過酷な現実が描写されていきます。サンフンとヨニが後半に漢江で膝枕するシーンは非常に切ないシーンになっています。

韓国映画は結構暴力描写が得意ですよね、日本でもこういう映画がないわけではないのですが、どちらかというと観客に親しみにくいものになっていることが多いのですが、この映画は非常に意欲的に暴力と罵詈雑言を駆使してサンフンのキャラクタ構築を行っており、それがこの映画の最大の魅力となっていると思います。
この直接的な暴力描写が映画の中で必要悪となっているのがよくわかります。ここを適当に描くと映画の持つテーマが非常に薄れてしまう。

またその他の登場人物の役者の演技も特筆すべきものを感じました。

この映画、かなり監督のヤン・イクチュンは苦労して借金までして製作されたそうです。多少荒削りなところもありますが、それ以上に見所が多く非常に心が引き込まれる傑作となっております。暴力描写に最初は慣れないかもしれませんが、次第にこの映画の世界に引き込まれることと思います。オススメです。


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