目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

バタフライ・エフェクト ★★★★★

2005-05-19 01:19:14 | ★★★★★
ほんとに楽しみな人は何も読まずに時間見つけて映画館行った方がいいですよ!とても面白い映画です。
監督:エリック・ブレス&マッキー・J・グラバー
出演:アシュトン・カッチャー エイミー・スマート

えー、私がもし映画学の講義をするときには「伏線の消化の仕方」という1節があったら必ず題材にしたい映画ですね。
えー粗筋はここを参照してもらうとして・・・なんというか、すごい映画ですね。まさしく「映画」を見たって感じです。ジャンルはSFの要素も入ったサスペンス・スリラーになるんですかね?

 みなさん、色々とラストの展開についての感想を言及してますがネタバレ警告してからにしましょうね。この映画はそれくらいラストの結末を予想するのは簡単ですから。どこを言ってもネタバレになっちゃうと思います。
 映画のストーリーの見せ方は緻密です。時間移動モノですから矛盾点を感じるところはあると思います。事実、私も映画を見終わったあとに「あれ?」と思ったりしましたが「過去を変えようとする」話では既にその時点で大嘘をついてるわけですから「整合性うんぬん」よりも「いかに面白く展開させているか」だと思います。もちろん整合性はあったほうがいいんですけどね。最初の大嘘が大嘘に思えなくなりますから。
 脚本や演出はかなり緻密に練られていた気がします。一つ一つのセリフにほとんど無駄がなく、また序盤のワンシーン、ワンシーンのほとんどが伏線となっています。ここまで伏線張りまくってちゃんと活かすのはかなり大胆だと思います。言わば解答を提示しておいてその過程に迫る、というか。2回目を見たらまた見え方が変わってくるのでしょうけど。役者、特に子役もよく頑張っていたほうではないでしょうか。見所はまさにアイデアとその見せ方でしょうか。
 アシュトン・カッチャー演じる主人公と子役がよく似ていたので違和感を感じずに見ることが出来ました。また、エイミー・スマート演じるヒロイン(?)役の彼女も体を張った演技でした。


ここからはネタバレします。気をつけてください

 Butterfly Effect(バタフライ・エフェクト)とは・・・
「ある場所で蝶が羽ばたくと、地球の反対側で竜巻が起こる」。初期条件のわずかな違いが、将来の結果に大きな差を生み出す、という意味の「Chaos Theory(カオス理論)」のひとつ。
この映画では、愛する者を助けるための些細な行いが、すべての人々の人生に予想もしなかった大きな変化となって襲いかかってくる。
 
 さて、主人公が戻ることが出来る過去における行動のちょっとした違いが生む大きなズレ。
それがこの映画の主題なわけです。こういった過去へ移動してうんぬん、という映画は非常に面白く話を展開させることができる反面、物語の整合性に無理が生じてしまいます。「ターミネーター」「T2][T3」のシリーズを通したタイムパラドックスや「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズでの矛盾、ドラえもんのタイムマシンもそうですし、「タイムマシン」もそうですね。こういった作品では矛盾点を感じさせないような演出が行われていますがどうしてもそこは難しいですね。
SF考証というものについては私はそうたいして詳しくありませんが、以下の3つの考え方があったように思います。ま、そもそもタイムマシンや時間移動の存在自体が論理的矛盾の発端ですが、それを言ったらロマンもへったくれもないですしね。

 ①「過去」を変えることによって「現在」、「未来」も変わる。(Aが自分の親を過去で結婚させなければ自分の存在は消える)

 ②「過去」を変えることによって別の「現在」、「未来」が現れる。(全ての次元は張り巡らされた糸のようになっていて例えば、AがいてBがいる未来もあれば、Aはいない未来もあるという風に並行世界が存在することになる)
 
 ③「過去」を変えようとしても時間的矛盾が許されず、本質的には「現在」も「未来」も変わらない。(微妙に変動することもある)

こういう三つの考え方があるんですけど、時間的矛盾を説明するためにはどれも間違ってるしどれも正しいんですよね。(そもそも時間移動の存在自体が論理的矛盾の発端だから)だから、うまく全てを2時間程度の映画で説明するのは至難のワザだと思います。そう考えるとこの映画はほとんどそういった矛盾を感じさせないのですから、監督の手腕は大したものだと思います。

 どうやっても彼女を助けられないどころか、自分がどんどん惨めになる様は非常に泣けてきます。切ない話です。ラストへ向かっての展開はもう泣くしかないくらいの悲しい選択でした。彼女と偶然すれ違っても何も起こらない、そういった展開を選択した主人公はとてもやりきれない気持ちでしょう。過去に戻れるから、って万能じゃないですよね。そうそううまくいかないのがとてももどかしいですが、それがまたドラマチックであり、「バタフライ・エフェクト」の醍醐味だと思います。(「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で主人公が金持ちになりますが、そういった気楽さ、エンタメ的要素とは無縁の展開ですね)

 最初は一見幸せそうな現実を構築することに成功したかに見えたけど結局うまくいかず・・・。で、何度も訪れる結果を変えようとしてトライするたびにどこかが望まない結果になってしまう。そして変えようとすればするほど望まない方向へと変わってしまう。例えば

・自分が半身不随・彼女と友達が付き合いだす・母親が肺がんで余命幾ばくもない
・彼女が没落して売春婦に。
・友達がうつ病で引きこもり
・友達が精神病院に強制入院
・自分が精神病院に強制入院
などなど、ろくな目に合わないわけで・・。
ほんのちょっとしたことが引き金で全てが変わってしまうこの映画の主人公の能力・・・。
まさしくバタフライ・エフェクトなわけですが、結局はそれが幸運を呼ぶことはなく
むしろ不幸な事態を招いてしまうというのは皮肉な話です。
 この能力がかなり限定的な能力だったこともこの映画をスリリングにした要因でしょう。自分の記憶のどの時点にもいけるわけではなく、自分が記憶を失ったわずかな時間、日時へだけさかのぼれる、というのはよくできた話です。このおかげで緊張感が出ました。
主人公がこの能力を封印してしまう(過去への時間移動のキー「日記」を焼く)ことで得たものが愛する者との別離だとするならば本当に悲しいことです。過去を変えてもしょうがないことに気づいた主人公は能力を捨て、平穏でどこか物寂しい生活をしているようでしたが、それで終わることなく過去にとらわれない生活を送ってほしいものです。(まあ、数十年分の記憶を持ってしまった後ではそうもいかないのかもしれませんが・・・)あ、それとまつさんの映画伝導師ブログではとてもいい記事が書かれています。

この映画はいい映画です。が!公開館数や規模が小規模なため見ることが難しいもです。しかし一見の価値が大いにあります!みなさん、ぜひ見てみてください。

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとうございます (まつさん)
2005-05-22 06:11:53
コメントありがとうございました。しかも記事の中でマイブログをお勧めいただいて感謝感激です。

このような良質な拾い物があるので映画鑑賞はやめられません。公開が小規模なのは本当に残念です。
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バタフライエフェクト★9 (エブリディisバレンタイン)
2005-06-17 23:38:23
★10で評価するなら私は9でしたね~

上半期では今の所No1です

基本的には「もしも過去に戻れたら」という

日本ならドラえもん?に初まりバックトゥザフューチャー的要素の含むテーマですよね、

あ、楳図かずお作品にも「イアラ 3」の

中の短編作品にありましたっけ。。。

とにかく、一人でも多くの人に観て欲しいです☆今月いっぱいは公開中みたいです、是非
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Unknown (kiki@管理人)
2005-06-19 14:12:08
>エブリディisバレンタインさん

コメントありがとうございます★

かなりよかったですよね!同じ意見のようで

嬉しいです!私もこれにはかなりびっくりしました。

無理して見に行ってよかったですよ、ほんと。

アナザーエンディングがあるというDVDがリリースされるのが待ち遠しいです。
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