目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~ ★★★

2011-03-05 23:58:36 | ★★★
旧ドラでも鉄人兵団が大好きだった私としてはこの映画は劇場で観たいな、と前から思ってまして、思い切って映画館に足を運びました。川崎TOHOで鑑賞しました。「パラレル西遊記」以来ですよ、劇場でドラえもんを観るの。

毎回、旧ドラリメイクで新ドラをやることの意義や作品の出来を心配する声も多いのですが、魔界大冒険が割とうまくいっていただけに少し気になっていた方もいらっしゃるのではと思うのです。そういう意味では今回気になる点としてヒロイン リルルの出来は上出来でして、諸氏は胸をなでおろすことだと思います。魔界大冒険の美代もかなり良かったですしね。あと、全体的にはかなり頑張ったリメイクだと思います。原作へのリスペクトも感じられました。細かいところでは気になるところもありはしましたが・・・。

○あらすじ
この鉄人兵団という題材は宇宙からロボットが支配する惑星「メカトピア」の軍団が攻めてくるお話でして、まずその尖兵として巨大ロボット「ジュド」と少女型ロボット「リルル」が日本にやってくる。。。というお話なのですね。で、たまたま、北極に行ったのび太がジュドのパーツを発見して鏡面世界で組み立てていくと・・・というお話。

○大まかな話
結構、お話の展開自体は無理のある展開なのにそれを感じさせない見事な構成になっており、ここは本当に崩しようがなかったのだな、ということがよくわかります。映画の冒頭にアムとイムのエピソードをちらっと見せたのは賢いと思います。なぜかというと旧作ドラでは終盤にアムとイムが割と唐突に出てくるから。そのため、伏線の張り方としては非常に好ましい。そういう意味では鉄人兵団とメカトピアも最初に見せてしまう、というのはある意味ではテンポがよくてよかったと思います。というか、いかに旧作ドラのテンポがゆったりしていて、新ドラのテンポが早く、お話の展開の要領がいいか、わかります。でも、旧ドラのあの独特の間合いが好きな人には少し物足りないくらい、ポンポン話が進みます。

○デザイン
ザンダクロスの現代風にリファインされたデザインは個人的にはかなり満足でした。Ζ顔なんですよね。原作では命名シーンでガンダムやマジンガーに言及していた事を思い出しました。あと、ザンダクロスの武装に某有名ミサイル描写が追加!これは是非劇場で確かめて頂きたい!ザンダクロスのその他の武装にはレーザーアイと巨神兵的薙ぎ払い描写も追加。ってか、ドラえもん観てたはずなのに、ザンダクロスのシーンだけユニコーンガンダム観てるみたいだった笑。いや、かなり良かったですよ、スパロボ好きとしては。その代わり、お腹からのレーザーはオミットされてましたね。ただ、自分がロボット設計するとしたら、お腹からの飛び道具は身体全体を標的の方向へ向けなければならないわけで戦闘時の回頭にも時間がかかるのであまり好ましくはない。頭部に搭載している方が理にかなってはいる。光学兵器を搭載するのはどうかと思うけど。センサー系への影響が心配。
鉄人兵団の幹部クラスのデザイン造形についてはあの首のモフモフが余計でしたね。元々デザインが昆虫っぽいのに余計にメカっぽさが無くなってしまった。無機質で無表情な感じが欲しかった。


○原作との相違点
山彦山の配置タイミングと場所と描写とか。BBQ開催時、気を抜き過ぎ、とか、そういった中盤の描写では気になるところはあります。あそこは金属探知チョークを引いておくべきシーンだと思います、だとか。
また、金属探知チョークといえば、ミクロスの扱いに関しては止むを得ないのかなあ。子ども向けである事を考えてもミクロスは旧ドラでも相当オーバーテクノロジーなスネ夫のラジコンだったわけで近年のリアル志向を考えればいた仕方ないかというのが私の意見です。ミクロスとのび太のやり取りが無いのは少し残念。あのやり取りからはのび太が意外に柔軟な思考も持ち合わせてる事がわかるのですけどね。おやじか、こじか、喧嘩したらどっちが強い?おおざる、こざる、喧嘩したらどっちが強い?っていうのもあったなあ。
あと、のびたの描写で言うとしずかちゃんが鏡面世界にやってきてロボットと遭遇してやられそうになるところでのびたが助けに来るシーンはもっとうまく描いて欲しかった。のびたの雄雄しさとか。やるときはやるんだぞ、という描写がひとつ欲しかったな。


大幅にオミットされたミクロスの代わりにまさかのジュドが可愛いヒヨコキャラ化「ピッポ」っとして登板するわけですが、ここの改変は個人的には良かったと思います。ジュドのAIというと、非常に強烈な印象のある、怖いキャラだったので、最初はどうなることかと思いましたが。あと、「改造するなんてそんなひどいこと!」とのびたが言いますが、旧ドラではドラえもんが容赦なく改造していたのを思い出しました。
ピッポの登場でこの映画のテーマである「ロボットと人間の共存」がより鮮明になったと思いますし、よりリルルとしずかちゃん、ピッポとのびた、という形でロボットと人間との心の交流がうまく描けていたように思います。ただ、リルルとのびたの関係性はやや薄れる結果となり、最後のシーンの感慨深さもまた、少し浅くなってしまったのかな、という気はします。また、ザンダクロスというキャラにも無機質なだけではない、人間性も感じられてよりドラマへの没入度は上がったかな、と。


ここからは少しネタバレですが、本作品は旧作も新作もしずかちゃんの神業的発想とひみつ道具の反則的活用でどんでん返しを迎えるのですがそこまでにはかなりの絶望感が演出されてる必要があったと思うのです。新ドラの緊張感の無さはこういう演出を苦手としてるように感じました。このお話の危うさはラストのしずかちゃんの解決方法があまりにSF的にも反則的なことではないでしょうか。そこをあまり反則的だと感じさせない工夫が作劇上、必要で、鉄人兵団が圧倒的に強い存在であることである程度バランスをとってるわけで、そこが弱いとちょっとドラえもん陣営が圧倒的な強さになってしまう。だって、ドラえもんは本来はひみつ道具もたくさん持っているわけで。そういう意味では旧ドラではショックガンや空気砲が弾切れまたはエネルギー切れを起こしていく描写は必然性のある描写だったのだなあ、と思うわけです。このバランス感覚は旧ドラの藤子不二雄先生特有のものなんだろうと思います。SF好きな人にこそわかる、タイムマシンの反則感。そこを払拭するためのある種の演出ですね。

総合的に考えると、今回のリメイクはかなり成功している部類だと思います。新ドラは受け付けない、という年代の方も多いかとは思いますが、もし、お時間に都合が合えばぜひ劇場で久しぶりに観てみてもいいんじゃないでしょうか。


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