Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

ハウルの戦争

2010-07-22 00:27:54 | アニメーション
最近はジブリネタが多くてナンですが、今日はハウルで。というのも、このあいだテレビで放映されてから、感想を書いてなかったので。ただ今日は短めでいきます。

ハウルについてはもう何度も色々なところで言及しているつもりなので、さすがにいいだろ、と思ってはいるのですが、肝心な部分については案外書いていないかもしれないな、と思い改めまして、ハウルにおける戦争について少し。本当は「星をのんだ少年」のシーンについて書くべきなのかもしれませんが、そこは以前に言及したことがあるはず(誰も覚えてないと思うけど)。

ハウルにおける戦争、ということでキーになるのは、何といってもハウルの台詞「ようやく守らなければならないものができたんだ・・・君だ」です(もしかするとちょっと間違った引用かもしれないけど確認するのが億劫なのでこれでごめんなさい)。もちろんソフィーに向けて言われた台詞なのですが、これを、そのまま文字どおりに理解している人が多いみたいで、ぼくなどはいかがなものかと思っているのです。学者にもそういう人がいて、困ったものだと思っているのです。

だって、この台詞を文字どおりに理解してしまうと、戦争を肯定してしまうことになってしまいますよ。戦争というのは何かを守るために人を殺すわけですから(人を守るため、国を守るため、利益を守るため)、守るといううことを正当化してしまえば、何をしてもよいということになります。ハウルは勇んで戦場へと向かいますが、それに対してソフィーはどう行動したのか。あの人は弱虫なのがいいの、みたいなことを言って、ハウルを戦争から遠ざけようとするんですね。ここにこそこの作品の意志が表れているとぼくは見ます。ハウルの一見勇敢な台詞は、ソフィーの行動によって否定されるのです。しかしながら最も痛烈な否定は、のちのハウルの表情のなさでしょう。過去から戻ったソフィーの目の前にハウルがうずくまっていますが、その顔は無表情で、血の気がありません。これが、戦争の結果なわけです。ハウルの台詞はハウル自身の無表情によって打ち消されたと言えます。

だから、弱虫のハウルが男らしくなったやっぱハウルってかっこいい~キャー、という意見には賛同しかねるわけです。ハウルは反戦から参戦へと移行し、ソフィーは非戦を貫きますが、やがて二人とも非戦の側につきます。サリマンは「このバカげた戦争を終わらせましょう」と言いますが、絵コンテにはしかし戦争は終わらない、と書かれています。そしてまだ軍艦の飛ぶ空の上を、ハウルとソフィーの城が浮遊するのです。

ハウルにおける戦争というテーマは意外と大きいと思うのですが、まあキーとなるのはこのハウルの台詞でしょうねえ。