Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

新海誠とコミュニケーション(番外編)

2008-09-29 21:47:52 | アニメーション
『新海誠を考える
~届かなかったメッセージ~(番外編)』

このあいだまで、「新海誠とコミュニケーション」と題して4回に渡り記事を書いてきましたが、改めて読み返してみると、考えがまとまっていなかったせいもあり、支離滅裂な箇所が見られたので、最後に整理しておきたいと思います。

「相手にメッセージを届ける」という切り口で新海作品を振り返ってみたわけですが、相手に伝えるものを、「言葉」と「気持ち」に分けて考えたのでした。こうすることで、言葉では伝えられなかったけれど、気持ちは伝わっている、というような複雑な場合に対処できるからです。すると、次のようになります。

『ほしのこえ』のノボルとミカコの場合
言葉:だんだん伝わらなくなる
気持ち:伝わっているか分からない

『雲のむこう、約束の場所』のヒロキとサユリの場合
言葉:伝わっていない
気持ち:伝わっているか分からない

『秒速5センチメートル』のタカキとアカリの場合(中学生)
言葉:伝わっていない
気持ち:伝わっている

『秒速』のタカキとカナエの場合
言葉:伝わっていない
気持ち:伝わっていると推測される(しかし拒絶)

『秒速』のタカキとアカリの場合(高校3年生以後)
言葉:伝わっていない
気持ち:伝わっていない

信濃毎日新聞のCMの娘と父親の場合
言葉:伝わっていない
気持ち:伝わっているか分からない

『猫の集会』
言葉:伝わっていない
気持ち:伝わっているときと伝わっていないときがある

こうして図式化すると明らかですが、言葉ではいずれの場合も確実には伝え切れていないことが分かります。しかもほとんどの場合、伝えようと努めているのですが、叶いません。しかし、伝えようと努力している姿、あるいはそれが叶わなかった瞬間を、新海作品ではクライマックスとして描いているように感じられます。つまり、相手にメッセージを届けるという行為を大切に描いているということです。新海作品が人の心を打つ理由の一つは、こういうところにもあるのかもしれません。