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加齢黄班変性に遺伝子治療

2019-03-29 10:32:26 | 健康・医療
世界中で何百万という人が発症するリスクのある「加齢黄班変性」は、加齢に伴う視力喪失の要因として最も一般的な病気だと言われています。

今回オックスフォード大学が両目に加齢黄班変性がみられ、特に左目が深刻な状況になっている80歳の女性に遺伝子治療を行いました。

この女性の疾患は萎縮型と呼ばれるもので、滲出型と比べてより一般的で治療の難易度も比較的高いと言われています。萎縮型は、黄班内の細胞(中心視力や焦点を合わせるのに重要な網膜の一部)が徐々に死滅し再生されない状況に陥ります。

これにより視野の中心にあるものがぼやけたり暗く見えたりすることがあるようです。今回の遺伝子治療は、加齢黄班変性の進行を食い止めることを目的とした臨床試験の一環として行われました。

治療では局所麻酔を投与し、左目の網膜をはがして人工ウイルスを含む溶液が注入されました。今回は実験的なやり方であることから右目は治療されなかったようです。

溶液には修飾されたDNA配列が含まれており、特定の網膜細胞にウイルスが届くことで加齢黄班変性の原因となる遺伝的欠陥を修復することが期待されています。

このようにウイルスをベクター(遺伝子の運び屋)として使用する場合は、色々と工夫がなされるようですが今回は詳しいところはわかりませんでした。

ウイルスが網膜細胞に作用し始めると、合成DNAを放出して細胞が疾患を治療すると考えられるタンパク質を作って、補体系によって引き起こされる炎症の不均等性を修正するようになると説明されています。

補体系は細菌と闘うタンパク質からなるものですが、黄班変性では免疫系が必要以上に活性化して網膜細胞を攻撃するようになります。今回の遺伝子治療によって、この補体系の正常でない動きを止められるはずで、これを確実にできるように目の後ろの極めて特定的な部分で行うのが重要だったようです。

今回行われた遺伝子治療は進行を遅らせるものですので、患者の左眼の症状の悪化が止まったかどうかを見分けるには数週間から数カ月と時間をかけて慎重に様子を見る必要があります。

手術が成功したかどうか判断するには時期尚早ですが、手術は1回で完了するようです。今回の遺伝子治療は悪化を食い止めるものですので、特に初期の段階にある患者への適用で効果を発揮されることが期待されています。

今回の遺伝子治療がどの程度簡便なものかはわかりませんが、眼の老化として治療法がなかった疾患の対処法として面白そうな気がしています。

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