ごっとさんのブログ

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石油タンパク 思い出話

2015-12-15 10:27:29 | 文化
先日漫画「サザエさん」の中に石油タンパクという話題が取り上げられているのを見ました。
これが出てきたのは1970年代後半のようですので、もう40年も前の話になります。ですからある程度の高齢者でないと、こういいた言葉自身知らないと思いますが、私にとっては懐かしいものです。

この時代日本がタンパク質不足になっていたのか、はっきりしませんが動物性タンパク質を補うため、私の勤務していた研究所ではかなり大勢の人数をかけてこの研究をやっていました。基本的な方針としては、微生物の体はもともとタンパク質を多く含むのですが、ある種の菌は菌体内にもタンパク質をため込み、菌全体がタンパク質の塊になるような種類がいるようです。つまりこの微生物のタンパク質を、動物の肉などの代わりに食べようというプロジェクトでした。

私は微生物とは無関係でしたが、自然とその進展が耳に入ってきました。もともと微生物を培養するためには、栄養源として炭素源と窒素源を必要とします。自然の物を栄養源として使えば、炭素・窒素両方入っていますので、一つだけで済んでしまいます。通常当社では、この栄養源として廃糖蜜という物を使っていました。これはサトウキビから砂糖を取り出すときに、何段階かの精製工程が入ります。この時きれいな砂糖を取った残りの液が廃糖蜜と言われ、廃棄されているものを安く購入していたわけです。真っ黒でドロドロした甘い香りの液体でした。

一方でより安い炭素源でも生育する菌の探索も行われていました。この成果として出てきたのが、パラフィン資化性菌という一連の微生物でした。パラフィンといってもなじみがないかもしれませんが、簡単に言えばガソリンや灯油、軽油の成分の総称です。こういったものは水に溶けませんので、これを栄養源とすることはかなり難しいようですが、当社の研究員が初めてパラフィンを使った培養法を発見したようです。これによって廃糖蜜のような限られた資源ではなく、ある意味無尽蔵にある石油を使って、微生物の培養が可能となったわけです。

そこで先ほどのタンパク質をため込む微生物を、石油を栄養源として培養し、その中からタンパク質を取り出すという研究となったわけです。当社の研究室レベルではほぼ成功し、実際にタンパク質を取り出していました。

ところがここで消費者団体から待ったがかかったのです。石油中には有害物質が多くありますので、そういったものから作ったものを食べるのは危険だという主張でした。結局この意見が強く、石油タンパクプロジェクトは終わってしまいました。どうも誰が付けたかわかりませんが、石油タンパクという名前も悪かったようです。結局日の目を見ることはありませんでしたが、私にとっても懐かしい思い出です。

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