ごっとさんのブログ

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ヒトiPS細胞から卵子と精子のもとを作製

2024-06-16 10:32:12 | 自然
ヒトの命の誕生を巡る研究が、基礎研究から生殖医療研究に向けてさらに踏み出しました。

京都大学の研究グループが、ヒトのiPS細胞を利用して卵子と精子のもとになる生殖細胞を大量に作製することに成功したと発表しました。このニュースは色々なメディアで取り上げられていますが、iPS細胞の性質から見るとそれほど難しいことではないような気がします。

ただしヒトの卵子や精子を実際につくって生殖に使う段階までには、技術的、倫理的に重要な課題が多くあり、生殖医療応用までにはまだ距離があるようです。現在iPS細胞を使った受精卵操作は国の指針で禁止されています。

iPS細胞は皮膚や血液などの体細胞に人工的に遺伝子を導入するなどして、さまざまな細胞に変化できる能力を持たせた細胞です。iPS細胞はケガや病気などで失われるなどした組織や臓器を修復する、再生医療に応用されて注目されてきました。

研究グループによると、卵子や精子はできる前にまずそれらのもとになる「始原生殖細胞」が受精2週間ごろにでき、6〜10週後に胎児の中の精巣や卵巣で精子の手前の「前精原細胞」と卵子の手前の「卵原細胞」に分化します。

研究グループは、2012年にマウスのiPS細胞を利用して卵子を作り、通常の精子と体外受精させてマウスを誕生させることに成功しています。その後2015年にはヒトiPS細胞に薬剤などを加えて「初期中胚葉細胞」と呼ばれる細胞を作製しました。

さらにこの細胞にある種のタンパク質を作用させて始原生殖細胞を高い効率で作ることに成功し発表しました。卵原細胞もヒトのiPS細胞から作ることに成功しましたが、できた卵原細胞は少ないものでした。

研究グループは今回、ヒトiPS細胞から始原生殖細胞に似た細胞を独自の方法で作製しました。ヒトの体内にあって骨形成にも関わるとされるタンパク質の一種をこの人の細胞に投与して培養しました。その結果約2か月で卵原細胞と前精原細胞を作り出すことに成功しました。

さらに染色体数を安定させ続けるなどの条件下で約4か月培養を続けると細胞数は100億倍に増えたとしています。今回の研究成果で、大量に前精原細胞や卵原細胞を作製できる手法が確立しました。

大量にできることで実験が飛躍的にしやすくなり、生殖細胞研究が進展すると期待されています。研究グループは卵原細胞などの形成過程で、エピゲノムリプログラミングも再現できたとし、今回の一連の研究により「ヒト生殖細胞の発生機構を解明できた」としています。