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進行性・再発肺ガン治療薬が日本で承認

2022-03-20 10:48:25 | 
昨年私の古くからの友人が、肺ガン治療中に急死しました。

彼は肺ガンの中の小細胞ガンという診断で抗ガン剤治療を受けていましたが、正月に自宅に帰ってきて子供たちと酒を飲んでいたのが急に亡くなったとのことです。正確な原因は結局分からなかったようですが、こういったことも治療中には起こるようです。

さて今年1月に承認された「ソトラシブ」は、進行性肺ガンのうち「KRAS遺伝子変異」というタイプに有効ないわば分子標的薬のようです。

肺ガンのうち8〜9割が「非小細胞肺ガン」に分類され、ガンの広がりが狭ければ手術、ガンが体の中で広がり手術が出来なければ放射線や抗ガン剤が適応となります。近年ガンには多くの遺伝子変異が存在し、患者ごとに違いがあることが研究で分かってきました。

私はこの点については、ずいぶん前からガン治療は部位で決めるのではなく、変異遺伝子を調べるべきと主張してきましたが、やっと一般的になってきたようです。

手術でガンを取り除けない進行・再発ガンの場合、ガンの原因となる遺伝子片を調べ、患者の遺伝子変異に応じた個別の治療を行う肺ガンの個別化治療が始まりました。今回承認されたソトラシブは、KRAS遺伝子変異のうち12番目のアミノ酸が変異した肺ガンに対して作用するものです。

これにより不良だった進行・再発の非小細胞肺ガンの予後が改善するようです。複数の薬が開発されている遺伝子変異ガンでは、生存期間を延ばせるようになってきました。

これまでKRAS遺伝子変異は古くから確認され、腺ガンのなかでも日本人で約10%、欧米人で32%を占めていましたが、薬の開発が難しく有効な手立てがありませんでした。

承認されたソトラシブの国際共同臨床試験では、日本人を含む126人のKRAS遺伝子変異陽性の肺がん患者にソトラシブを1日1回経口投与しました。患者は免疫チェックポイント阻害剤や抗ガン剤の前治療履歴のある人たちでした。

その結果奏効率、つまり事前に設定された基準を超えた効果があった患者は37.1%で、わずか4人ですが完全にガンが消えた人も出てきました。また43.5%の人がガンの縮小まで至らなくても、腫瘍が大きくならず安定した状態を保てました。

KRAS遺伝子変異の患者に有力な治療選択肢が出てきたのは確かですが、ほかの遺伝子変異の分子標的薬と比べると効果が劣るようで、他の薬との併用がどうなるのか研究が行われるとしています。

このように生存期間も短かった進行性・再発肺ガンに有効な治療薬が出てきたことは素晴らしいのですが、果たしてガン細胞の遺伝子検査がどこまで広がるかが今後の課題かもしれません。


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