けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

ISILの理解には、日本の暴力団事情が参考になるかも知れない

2015-02-02 23:31:40 | 政治
最悪の事態になってしまった。
まずは、後藤健二さんのご冥福を祈りたいと思う。

巷では、「結局、ISILの目的は何だったのか?」という疑問の声が多く聞かれるが、前々回のブログ「ISILの今回の動きは論理的・戦略的ではないのではないか・・・」がある程度、その答えになっているのではないかと思った。このブログでは、本来、ISILの目的は(1)身代金、(2)空爆の阻止、(3)兵士のリクルート、の優先順位があり、その視点から見た時に最初の後藤氏と湯川氏が登場する映像では(1)の身代金という目的が明確であったにもかかわらず、その後の静止画映像などでは(1)のみならず(2)(3)に関しても目的に沿った戦略になっていないと指摘させて頂いた。この意味で、殆どISILの活動は裏目に出ており、その点が不可解であると感じていた。(2)に関しては、ヨルダン人パイロットを拘束し続けることが、空爆参加国のパイロットに対して無限の恐怖を植え付けることに繋がるので、パイロットが解放される可能性を世界に示してしまうのは完全に裏目である。ISILの応答ではパイロットに関する人質交換の言及はないが、ヨルダンがパイロットの解放を求めるのは目に見えていたから、余りにもお粗末と言える。(3)に関しても、お粗末な映像でリクルートには適さないし、恐怖や迫力を感じさせるものではない。こう着状態にある状況下では、交渉の主導権を徐々にヨルダン政府に奪われつつある印象を与えていたので、アメリカ、イギリスならまだしも、たかだかヨルダン相手に手こずっているとなると、ここに志願する人など本当に期待できない。だから、実際には裏で身代金を狙っていたというストーリー以外では、これらの動きを合理的に説明することができない状況にあった。

これに対し、1日の後藤氏の殺害映像では最初の映像と全く同じ完成度の高い映像となっており、(3)の兵士のリクルートにはもってこいの映像となっていた。(2)に関しては、日本は空爆に直接参加していないのであまり効果はないだろうが、(1)に関しては「交渉に早い段階から応じないと、結局、殺されてしまうことになるから、応じるなら最初から腹を決めてかからねばならない」というメッセージをヨーロッパの国々に発信することができた。(3)に関しても、ある程度完成度の高い引き込まれる映像に仕上がっているから、欧米諸国に不満を抱く人々へのリクルート効果は抜群である。強いISILのイメージと恐怖を与えるから、当初からの目的に沿った行動だと理解できる。

この様に考えると、実は何が起きていたのかは予想することができる。

まず、報道の中でも指摘されている様に、ISILは1枚岩ではなく、様々なグループが凌ぎを削っている状況である。言ってみれば、日本の暴力団の様に、日本全国に「○×組」と名を轟かせる広域の集団も、実際には個別の「△□組」という中小暴力団組織の集合体であるように、個々の「組」がお互いに主導権争いをしながら中心となる「○×組」が全体を統率している、そんな感じだろうか。最初に後藤氏が誘拐された段階では、誘拐の実行犯グループの「△□組」が自分たちの手柄を主張して、静かに身代金交渉を行っていたのだろうが、安倍総理の2億ドルの支援のニュースを受けて、本部の「○×組」の幹部の鶴の一声で、本部側主導で映像を作成し、世界に2億ドルの身代金要求の映像として流されたのだろう。しかし、日本政府が全く身代金に対する要求に応じる気配がなく、その時点で誘拐の実行犯グループ側(つまり「△□組」)が「やっぱ、我々に任せてくれ」と盛り返し、場当たり的な映像を世界に発信することになった。しかし、それが上述の様に裏目に出まくったために本部の「○×組」からお叱りを受け、交渉権を剥奪されて本部主導で後藤氏を殺害し、最後の映像を公開するという流れになったのだろう。

もし、ISILが順風満帆の状況にあったなら、本部側も実行グループ側に交渉権を委ねる様なことはなかったかも知れない。だから、ISIL内部では空爆などの影響で経済力が乏しくなり、本部側が末端の組の暴走を十分にコントロールできなくなっていることが予想できる。貧弱な映像を流す様なことは、本来ならば本部側の事前のチェックでストップさせても良さそうなものだが、ISIL側にはそれだけの余裕はなかったのだろう。指揮命令系統も、何処まで機能しているのかは疑わしい。ただ、余りにも誘拐の実行犯グループの行動がお粗末だったので、本部側が盛り返して、最終的にはISILの目的に適った行動として日本人誘拐&殺害事件を着地させるに至った。最後のところは悔しい限りだが、現状はこうなのだろう。

ちなみに、現時点でヨルダン人パイロトの安否は不明のままである。もし生きているのであるならば、生きていることを示すと同時に地獄の苦しみを味わっていることを公表した方がISIL側には好都合である。しかし、にもかかわらずISILはヨルダン側の生存の証拠の公開を無視し続けている。一部では、ヨルダン人パイロットはシリアのラッカで自殺した様だ・・・との情報もあり、やはり既に自殺または殺害されている可能性が高いのだと思う。上述の実行グループが、ヨルダンからの生存情報の公開を求められ、死んでいるが為に対応に苦慮して本部側に泣き付いた段階で、本部側が怒りまくって交渉権を剥奪したというシナリオも十分に理に適っている。細かなところでは色々あるだろうが、大局的には上述の様な理解が尤もらしそうだ。

そんなことが仮に正解だとしてどうなる訳でもないが、例えて言えば中小暴力団組織の集合体の中の「目立ちたがり屋」的な組の弾けた行動は超危険である。それはシリアやイラクの本家のISILだけではなく、勝手連的な世界中のISILに同調する勢力に関しても同じである。例えばインドネシアなどで日本人が誘拐された時には、この様な弾けた組織の暴走と考えられる。この様な理解を意識した上で、世界中の邦人の安全確保の仕方が今、問われているのである。

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