一身二生 「65年の人生と、これからの20年の人生をべつの形で生きてみたい。」

「一身にして二生を経るが如く、一人にして両身あるが如し」

三島由紀夫「文章読本」(1959) 

2012年08月15日 | 小説作法

三島由紀夫、34才の時の評論である。作家として、十何年経ち、月に平均約百枚の原稿を書いている、と言っている。三島らしく、小説(短編小説ー川端康成、堀辰雄、梶井基次郎、芥川龍之介と、長編小説ーゲーテ、バルザック、ドストエフスキー)の文章、戯曲(小説と台詞のみの戯曲の文体の違いー福田亙存「キティ台風」)の文章、評論(ヴァレリー、小林秀雄、中村光夫)の文章、翻訳の文章と分野別に言及している。

文章の技巧の章の内容を列挙すると、人物描写ー外貌、人物描写ー服装、自然描写、心理描写、行動描写、最後に文法と文章技巧としてまとまられている。

心理描写には、ジェームス・ジョイスの「ユリシーズ」の流れをくむアングロサクソン的心理小説、フランス古典的伝統にのっとるフランス的心理小説、プルーストがベルグソンの影響を受けて発明したと称される無意志的記憶に基ずく心理主義文学の形があり、さらに第四として、ドストエフスキーのような心理解剖小説もある。

結語として、文章の最高の目標は、古典的教養から生まれる格調と気品に置いている、と結ぶ。

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仮面の告白』(1949年)
潮騒』(1954年)
金閣寺』(1956年)
鹿鳴館』(1956年)
鏡子の家』(1959年)
憂国』(1961年)
サド侯爵夫人』(1965年、戯曲)
豊饒の海』(1965年-1970年)

随分と三島文学は読んだ記憶があるし、「仮面の告白」「金閣寺」は印象に残っている。しかし、最後となった「豊饒の海」四部作には今の所は、手が出ない。