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再び原点回帰なり!

未熟なビジネスマンの心のつぶやき

実体験に基づいた起業論(23)

2008-05-04 09:27:11 | 連載:実戦的起業論

財務論(2):創業資金をいかに集めるか?

会社のスタートアップ資金をどう調達するか?その前にいくら集めるかを決める必要があるが、その額は創業時の事業計画に依存する。

ベンチャー立上げを成功させる秘訣は、子供と一緒で「小さく産んで、大きく育てる」であろう。ただし、創業実績のあるようなベテランの起業家の中には、最初から大きなビジョンと戦略を描いて、多額の資金を集めて創業に挑戦するケースもあるが、それは極めてまれことである。

創業時にお金がたくさんあることは、精神的には楽かもしれないが、むしろ資本金は事業計画上債務超過にならない程度のぎりぎりのところで浮上させていくのが理想であろう。

人間は弱いもので、お金に余裕があると、すぐに気を緩めて無駄遣いをしてしまうものである。ベンチャー立上げ時の社長の心構えは、最初から「つめに火を灯す」ようなケチケチ精神でいくべきである。ただし同時に、本流の事業には、大胆に金を出すことも忘れてはいけない。このバランスと舵取りが、社長の重要な役割でもある。

創業資金は通常、資本として調達することになるが、可能であれば創業社長または創業グループで全額を賄うことが理想である。その上で、公的な金融機関や自治体などが、創業支援のための融資制度を提供しており、そうしたところからの借入も検討すべきである。

借入の場合には、一般的に社長の個人保証を求められる。この日本の悪しき慣習には閉口するが、ある程度はやむを得ないかもしれない。最近では、無担保無保証というありがたい制度もあるようなので、いろいろところで相談してみると良い。

当初の事業計画上、どうしても資本金がある一定額以上必要であり、創業者グループだけでは賄いきれない場合には、ベンチャーキャピタル(VC)など、リスクマネーの供給を生業とするところに頼らざるを得ない。

しかしながら、日本では創業期に出資してくれるVCはまれである。その場合は、事業会社、特に大手企業へ出資を求めることも一案ではあるが、VCにしても、事業会社にしても、出資稟議を通すためには、自らの事業計画が相当程度しっかりしていないと難しい。その事業計画をブラッシュアップするためにも、いろいろな投資候補企業へ説明をして相手を納得させられるかどうかは、その後の事業活動にも役に立つことであるので、社長は自らプレゼンテーションの先頭に立ち、世間の時として冷たく厳しい反応を真正面から受けるべきである。これは勉強になり、社長を一段と成長させる。

いずれにしても、創業時も創業後も同じではあるが、社長が会社の必要とする適切な資金をいかに集めてこられるか、これが社長の最大の役割であり、これこそが社長の力量発揮の場なのである。

(次回に続く)

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実体験に基づいた起業論(22)

2008-04-27 07:25:21 | 連載:実戦的起業論

財務論(1):お金には色も匂いもないのか?

今回から財務論に入る。私にとっては、いまだに最も苦手なテーマ。

それでも、10年以上前のFESCO創業時は、今以上に何も知らず、よくもそれで会社を立ち上げたものだと、今更ながら汗顔の至りである。

それでも、当時なりに書物などで勉強はしたつもりであるが、やはり実践の場を経験しないとすべてのことが臨場感を持てず、要はまったく分かってなかったということか。

会社の立ち上げには、資金が必要である。当時は、法的にも1000万円ないと株式会社はできなかった。今は1円でも株式会社は作れるので、隔世の感は否めないが。

まず、創業資金をどう集めるかということに、会社設立のポリシーが必要だという基本が理解できていなかった。

その会社の支配権、経営権、立ち上げ後の経営方針、その後の成長戦略、上場を目指すのかどうかなど、さまざまな経営に関わる重要事項を熟慮の上、最初の資金計画が立案されるべきである。

創業資金の調達には、大きく二種類しかない。借入資本である。当時は、余程のことがない限り、創業時の借入は不可能であったことから、残りの手段は資本調達しかない。

ここで「資本政策」ということが重要になってくる。

私も創業後にいろいろなファイナンス関係者から、「貴社の資本政策はどうなっていますか?」という問いを頻繁に受けたが、恥ずかしながら当時の私には、この「資本政策」という言葉の本当の意味が分かっていなかった。また、私の周りにも、それを私の立場に立って親身に考えて、アドバイスしてくれる人もいなかった。

とにかく自分の事業計画に賛同していただける人や組織から、出資いただければ良いという単純かつ純粋な気持ちで、必死に説明に回ったことだけを記憶している。

その時は、コンソーシアムの立ち上げと会社の創業資金集めをほとんど同じ次元で捉えており、「お金には色も匂いもない」という根拠のない確信に満ちていた。

しかし、この言葉がまったく間違いであったことに気付くのは、上場などが視野に入り始めた頃のことであり、時すでにおそしであった。

間違いなく「お金には色と匂いがある」のである。

(次回に続く)

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実体験に基づいた起業論(21)

2008-04-20 09:49:59 | 連載:実戦的起業論

組織論(5):組織として上場は通過点か?

組織論の最後は、組織と上場(株式公開)の関係を述べたい。

ベンチャー企業にとって、株式公開としての上場は、大変分かり易い目標である。ただし、良く言われるように、上場は決して最終ゴールではなく、さらなる成長に向けた通過点である。

確かにその通りであり、上場すること自体を目的化することは、好ましくなく、結果として上場後に苦労することになる。

しかしながら、組織論的には、人材の採用も含めたマネジメントという視点から言うと、上場という特別なイベントは、組織を一丸にまとめる上で、極めて有効かつ明確な目標となりうる。

組織マネジメント上、社長が認識すべきことは、上場前と上場後では、入社を希望してくる人材の質が明らかに異なってくるという事実である。それは人材の質の良悪ではなく、気質そのものが違ってくるということである。

誤解を恐れずにもっと直截的な表現を用いると、上場前は「やまっけがある人材」であり、上場後は「安定志向の強い人材」ということになる。

この「やまっけ」というのは、決して悪い意味でなく、会社の成長に合わせて自己を成長させたいという意欲も強く、チャレンジ精神も旺盛ではあるが、時として個性的なあまり組織的な動きが苦手だという程度である。

一方、「安定志向」というのも、決して悪い意味ではなく、個人的な思惑よりも組織的な動きを優先するなど、所謂「お行儀が良く、上司としては使いやすい」人材である。

ベンチャーの社長は、上場前後に入社してくる人材の気質に違いが生じることに配慮した組織作りやマネジメント体制を敷く必要がある。

このあたりは、なかなか説明が難しく、実体験を経た者にしか理解できない「臨床の知」的な感覚である。

企業の成長スピードと組織の在り方や人材確保というのは、複雑極まりない経営テーマであり、だからこそ、トップマネジメントにとっては、永遠の課題であり続けるのであろう。

今回で「組織論」を終了し、次回からは「財務論」に移りたい。

(次回に続く)

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実体験に基づいた起業論(20)

2008-04-12 11:27:56 | 連載:実戦的起業論

組織論(4):会社の拡大成長期に最重要な機能は?

会社は人に始まり、人に終わる。

ベンチャー企業の創業期は、当然ながら能力があり、かつモチベーションが高い人が中心なので、あまり人事は問題にならない。

そのベンチャーもいよいよ事業が軌道に乗り、拡大成長期に入ると、人の採用問題が最重要事項になってくる。その時期であっても、通常はまだ名も知れないベンチャーであるために、なかなか有能かつモチベーションの高い人が入社希望することは稀である。

それでもできるだけ良い人を採用しないと、事業の拡大・発展は望めない。

そこで組織の拡大期に最も重要な機能は、間違いなく人事である。時として、社長が直接面接して採否を決めることもあるが、できれば専門の人事責任者、それも人事関連のプロに任せることが望ましい。

短い面接では、基本的に人の本当の能力を見抜くことは不可能である。やはり、少なくとも半年ぐらいは一緒に仕事をしてみて、その人の真の資質が分かってくる。特に、ベンチャーは、特殊なマインドとある種の柔軟性が求められるので、なかなかフィットする人は少ないかもしれない。

したがって、社長が面接してその場で採用を決めてしまうと、その後の対応に困るケースが多々出てくる。私もそうした苦い思いを幾度となく経験した。

人材採用のポイントは、まずその候補者と一緒に仕事をする予定の現場責任者が、その人物をどう評価するかが、一番優先されるべきである。その次に人事責任者が総合的に人物判断をする。社長は、それらの関門を潜り抜けた人としか合わない。もっと理想を言えば、まだ会社の規模が小さい場合は、関係者全員が会って、もし一人でも駄目という場合は採用しないぐらいの慎重さがあってもいい。通常は、そんな贅沢は言えないということで、ある程度妥協するのだが。この時の妥協は、少なからず後でしっぺ返しを受ける。

また、ベンチャーだからと言って、人事制度(評価方法・給与体系・時間外勤務など)をおろそかにするのも、その後の経営上の大きな障害となる。この点でも、人事のプロを早目に雇って、組織の成長に合わせたできる限り公平かつ明瞭な人事制度を作ることを薦めたい。

これも私の苦い経験から出るアドバイスである。

(次回に続く)

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実体験に基づいた起業論(19)

2008-04-05 09:00:47 | 連載:実戦的起業論

組織論(3):会社の成長と組織の拡大をいかにバランスさせるか?

ベンチャー企業として創業したら、株式公開という通過点ではあるものの、明確な目標を立てるものであろう。

そのためには、会社の成長に応じて、組織を拡大させていくことが重要な課題となる。そして、社長はそのバランスをいかに取るかということに、心血を注がざるを得なくなる。

同時に、組織は人なので、拡大するということは、新たに人材を採用するということである。もちろん、アウトソーシングなど、人件費の一部変動費用化は可能だが、やはり中長期的に中核を担ってもらうような優秀かつモチベーションの高い人をどのくらい採用できるかが、組織の成長の質とスピードに大きく影響する。

とはいうものの、人を採用すれば当然人件費がかさみ、収益を圧迫する。また、どんなに優秀な人でも、利益貢献できるようになるまでに、半年や一年はかかる。つまり、人材はある種の投資と同じであり、その投資回収には、時間と忍耐が必要になる。時には、回収不能も覚悟しなくてはならない。

このような早く会社を成長させ、利益を安定化させたいという社長としての基本的ニーズを満たすことと、有能な人材を確保していくこととは、密接で深い関係がありつつも、短期的に見ると利益相反することになる。このバランスは難しく、おそらく正解を導く便利な方程式はない。

私の拙い経験から言うと、ベンチャー企業をうまく立ち上げるには、できるだけ現有勢力で「泣きながら」も対応し、人材採用は遅らせるべきである。そうしないと、あっという間に資金繰りに息詰まる。

一方、採用と言っても、名もなきベンチャーの場合、こちらが相手を選ぶというような贅沢は一般的には許されない。人とは、ある種の「出会い」であり、その出会いを大切にする。

私の座右の銘は、「一期一会」である。つまり、どこにどんな出会いがあるか分からないからこそ、常に最初の出会いの一瞬を大切にする。

そして直観的に「この人だ」と思った場合は、その場で「あなたの力を貸してほしい」と頼み込む。先ほど述べた「採用は遅らせるべき」という言とすでに矛盾しているが、こうした直観的な出会いは逃すべきではない。

経営とは、常に矛盾との正対である。

(次回に続く)

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