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渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

タップ交換 〜ビリヤードのキュー〜

2022年03月27日 | open


今ではネットでタップ交換の方法も
簡単に知る事ができるようになった。
まだ今ほどネットが普及していない
頃の2002年、私はタップ交換の方法
のウェブページを公開した。
国内でネット解説は嚆矢だったよう
で、その後に登場した多くのタップ
交換のサイトページは私のページの
焼き直しの物ばかりだった。
ベレーのかぶり方とタップ交換の
ウェブ解説は私が国内における魁
かと思う。思うではなく、事実。
存在しなかったのだから。

ミリタリーベレーのかぶり方は70
年代に元英軍兵士から直伝で教わ
った。
タップ交換の方法は80年代中期に
東京の先達から直伝された方法を
公開しただけだが、手先が器用だ
ったのか、いつからか教えてくれ
たSA級の人よりも私のほうが巧く
手作業交換できるようになってし
まった。その人が「頼むよ」と店
のキューや個人物のキューまで
任せるようになっていた。
これまでタップ交換した数は、
店舗分も含めてもうとんでもない
数なので数え切れない。3桁の後半
に届く。
自分のキューを見た初めて行った
店の常連さんたちが、私のキュー
を見て「誰がやったの?え?自分?
ほお〜」と言う事を何度も経験し
ました。何度もです。
これ、研ぎと同じで、数です。
あとは緻密に押さえなければなら
ない仕事の勘所を外さない事。
私は金を貰って交換作業をした事
はないけど、作業内容はプロのそ
れだと思います。
やり方を教えてくれたのは先達で
すが、私なりに押さえどこは考え
てやるようにしています。

タップ交換の要諦はいくつかあり
ますが、とにかく最重要な事は
「密着」です。
その為には、先角とタップ底面の
水平面一(つらいち)をビシッと旋
盤で削ったように出す事。
新品カッターの刃を立てて当てて、
目視確認で光が一切漏れないよう
に水平を出します。砥石の研ぎ面
のように真っ平らにする。

カッターの刃を立てて均しをする
場合、回転させると中心部と円周
の外周部では削り度合いが異なる
ので要注意。刃は平行移動させて
均し削りをやります。360°方向に。


タップ底面もカッターの刃で平面
出しをやります。サンドペーパー
の上で擦るのは初期コート剥がし
ではよいかもしれませんが、斜め
削りや外周部を多く削りやすいの
で、やはりカッターの刃一本で
立て削りで360°均しで平面を出す
ほうが良策です。

仮に載せてみる。隙間ゼロかどう
か綿密にチェックする。


接着剤漏れからの保護の為に、先角
にはマスキングテープもしくは透明
テープを貼る。
コンマミリのみ先角先端より下げて
巻き貼る事。目視でやります。視力
大切。


この作業は早合わせの場合には省
略しても構いません。正確な作業
さえできれば。
巻かずに交換もやりますが、丁寧
な安全策としては私は巻くように
しています。しかし、必ずしも必
ではありません。柔軟に。


接着剤は先角に塗ります。タップに
塗ると染みる為。
先角の真ん中が凹んでいるタイプ
は先にシアノで埋めて、乾いてから
完全に平面にする。中空きだと
不具合発生の危険性があります。
とにかくタップも先角も面一で
真っ平らの平面にしてから接着
します。

私はシアノで接着します。
押圧してプチっという音を耳元で
確認する。必ず音がします。
中の空気が押圧で外に抜けた音。
瞬着は瞬間ではなく、空気中の水
分と化学変化で硬化します。
密着部にはタップの残存水分と
空気があるので固まる。
しかし、凝固するまでは押圧し
続けます。


これは私なりの確認方法。
シャフトのみをコンクリートに
自重落下させてシャフト個体の
音質を確認します。
良質シャフトは全部高音がする。
さらに最良質はキーンという金属
のような音がします。


硬化後にタップ切り作業に入る。


先角を切らないように先角に沿って
ザク切り。ここは包丁の使い方と
同じ用法で切断します。手元を上げ
て斜めに刃を入れてから前と下に
押し下ろして切る。
力技ではなく、刃物の刃先とエッヂ
の小刃の楔作用を利かせる切り方で
切り落として行きます。


このカリフラワー形がこのあとの
桂剥きの下地の形。


ここからカッターの刃で桂剥きに
して行きます。

タップ接着後にはすぐにテープは
取ったほうがよいのですが、貼っ
たままでも構いません。
桂剥きは、これは包丁とは違って、
刃物は完全固定でシャフト側を回
して行く。カンナの原理で切って
行きます。鉛筆削り型の器具より
も精密正確に削り切り出しが可能。
全神経を集中して切り削る面を凝
視します。視力大切。


タップ外周を真円の円筒形に削った
ならば、金属平ヤスリで先端を円形
に成形して行きます。
これもヤスリの使い方があるので
いろいろ研究してください。
力技ではなく、ヤスリを利かせる
方法で使います。シャフトを回し
ながらも削る。
ヤスリ側も動かしたり、ヤスリ側
は固定したままだったり、大まか
に三種類の方法で削ります。




ここからは先達の技。
平ヤスリで上から叩きます。
その時は絶対に先角を持ってシャフ
トを空中に吊り下げてから。
でないとキューが壊れます。


キンキンという音が鳴る筈。
中空ハイテクシャフトや積層タップ
ではやらないほうがいい。
あくまで、ソリッドシャフトと一枚
革物タップの場合の叩き締めです。
これやるだけでチョウチン知らず。


叩き締めでの整形後です。


家庭でできる事。
秘密兵器、牛乳で磨きます。
ティッシュかタオルに少量垂らし
て、包んで絞るようにして磨く。
シャフト側を回します。
ギュッギュという音が出たら摩擦
熱でタップが乾燥した知らせなの
で、そこでやめます。
玉屋の現場では自分のシャフトで
は唾でやる(笑
人様の物は水道の水をティッシュ
にごく少量垂らして。


磨くとこんな感じになります。
あとは、平板等のタップドレッサー
で面を仕上げて、チョークを塗って
完了。乾燥防止の為に、タップ先
生の削り面が露出した部分には
チョークを塗っておいたほうが賢明
です。これも先達からの口伝(くでん)
です。

これまで多くのタップを交換して
来ましたが、タップが飛んだのは
2回のみ。コンクエストを使った
時に、タップに接着剤が染み込み
過ぎて飛びました。
それはコンクエストタップを半分
以上切断して平面を出す加工で
完全解消。
その2例を除いて、私が装着した
タップが使用で飛んだ事は今まで
ありません。


私が自分のキューはすべて自分で
タップを交換するのは当たり前で
すが、プレーヤーは自分でビシッ
とタップ交換はできたほうが何か
と有利かと思います。


なぜならば、信頼できる技術を持
つ人に任せるのもアリのひとつの
手ですが、もしその人の助太刀が
得られないシーンだと自分の武器
である撞球剣のタップについては
人に遅れを取ってしまうからです。
それは選手だとしたら、その遅れ
は選手競技のネガティブな部分を
構成してしまう事になってしまう。
やはり、自分でも完璧にできるよ
うになっておいたほうがよいかと
思います。プレーヤーは。


勘所を押さえて熟練すると、旋盤
と同じような精度が出せます。
この画像のタップも手作業で交換
した個体です。



自分で交換したタップでのプレーは
気持ちいいものです。

ストレート・プール のブレイク

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