1987年、空前絶後のビリヤード
ブームが日本に訪れた。
そんな中、『ブレイクショット』
が少年マガジンに連載開始とな
った。『バリバリ伝説』といい、
当時は講談社少年マガジンが
ぶっちぎりの販売数だった。
講談社のバイク専門雑誌「ベスト
バイク」業界誌の中で一番売れ
ていた。(高速道路料金訴訟は
ベストバイクによる誌面での
後方支援もあった為に広報の
影響力もあって成功した。
みんなで声を合わせれば現状
は何とかなる、としてバリ伝
グンちゃんまでもが富士スピ
ードウェイ廃止に反対しよう
ぜ、と呼びかける程、80年代
は熱かった)
『ブレイクショット』は典型的
なマンガ路線だ。
バリ伝はフロントフォークの
動きまで克明に描いたりして
かなりリアルな漫画だったが、
本作はマンガの王道の現実には
あり得ない事を描写するエンタ
ーテイメント漫画だった。
清城高校ビリヤード部の主人公
織田信介と生徒会長の早川麻子
のコンビが織りなす学園青春
ラブコメスポ根漫画だ。
出てくるビリヤードの技は、
現実世界では物理的にも絶対に
発生しない事を描いている。
ダブルジャンプは実際にできる
が、これほど高く手玉が上がる
事はまず無い(笑
そして、練習試合も高校都大会
もなぜかナインボール1ラック
マッチで戦われる。
これもあり得ない。
そして、物理的に絶対に起きな
い事も描かれる。
マッセで円は描けない。
それは物理的に絶対に起きない。
これは起き得るかも?(笑
ただし、手置きで玉の上に玉を
載せる事はできるが、ぶつかり
合ったボールがこのようになる
事は考えられない。
勢いがあるボールは当たると
反発し合うからだ。
山積みになる事は100%近く無い。
その後、物語ではさまざまな
魔球が登場する。
ショットガンショットといって
手玉を粉砕して飛び散った破片
で的玉を落としたり、消える魔
球だったり、的玉をすり抜ける
スルーショットという魔球だっ
たり(笑
他にも盛り沢山だ。
こうしたマンガチックな描写
は永遠の名作『巨人の星』(少年
マガジン)以来の20年ぶりの
作品展開で、荒唐無稽ながら、
読者は大喜びで読んでいた。
実際にビリヤード場でも、仲間
同士で冗談で「スルーショット
だっ」とか言いあったりして
いた。
的玉に手玉がかすりもしなかっ
た時に(笑
ショットガンブレイクとまでは
行かないが、強烈なブレイクを
する人を四国で見た事がある。
アマだが実力者だ。
「また割ったの?」と店の人
に言われて予備玉を出していた
が、1番玉が欠けてしまうのだ。
手玉も欠けたりもしていた。
玉が欠けるのは初めて見た。
手玉が変形した事はある。
うちの撞球会のアラミスが明ら
かに変形した事があり、手玉の
み新品に交換した事があった。
何人かが変形を現認したので、
計器で計測したら真円ではな
く歪んでいた。最初はまんまる
だった。
これらの事は現実に起きるが、
マッセは途中でラシャとの摩
擦が変化するのでマッセで円
は描けない。U字ターンやL字
軌跡は描けても、円状に手玉が
動く事は物理的には無い。
『ブレイクショット』はそう
した非現実を描いた漫画だが、
考えたら『巨人の星』の消える
魔球や大リーグボール3号の
打てない魔球も現実にはあり
得ない。
大リーグボール1号は、時々
野球の公式戦でも見る暴投球
なのだが、2号、3号はあり得
ない。『あしたのジョー』の
トリプルクロスカウンターが
3枚の威力を持つなどという
事も。
『ブレイクショット』の主人公
織田信介はこれまた学園漫画の
王道で、向こうっ気が人一倍強
くておっちょこちょい、同学年
の真面目でまとめ役の女子生徒
には頭が上がらない。
そして、会心のプレーで難局を
切り拓いて行く、というラブコメ
スポーツ物。これはパターンだ。
付け加えるならば、それが転校
生で、女子生徒が食パンをかじり
ながら朝あわてて家を飛び出して、
道で転校生とぶつかると完璧だ。
これぞ青春ラブコメの王道。
そして、クラスで担任から紹介
された転校生が朝ぶつかった
男子で「あー!」と互いになる
のだ。
実は『バリバリ伝説』でのグン
とヒデヨシの出会いも、この
青春ドラマの王道をきちんと
踏襲していた。
『ブレイクショット』は非現実
的な漫画の中のマンガだが、
とても面白い。
主人公の年齢はタイムリーには
私の10才年下だ。バリ伝グン
ちゃんは5才下。
どちらも実在していたら、今52
才と57才だ(笑
1980年代。
それは本当に面白い時代だった。
皆がカラリとしている。
とても健康で健全だ。
『ブレイクショット』と『バリ
伝』は人の心の大らかさを反映
していた。
それに私は『はじめの一歩』も
加えたい。
こちらは1989年から現在まで
連載が続く。主人公は本当は
もうおっさんだべよー、なの
だが、こちらもまた漫画の王道
で、「主人公は歳を取らない」
というサザエさん路線を行く。
サザエさんは連載開始の1946年
3月時点で24歳だ。1922年生ま
れ。
生きていたら、今年3月時で満
101才になっている(笑
鉄腕アトムは生まれの年月日
設定が2003年4月7日なので
まだ誕生して20年だ。
歳は若いがロボットとしては
2023年の今では旧式だろう。
2003年のパソコンは今はほぼ
使えない。
まだDVDが主体ではなく、ビ
デオが隆盛していた時代が今
から20年前だった。
そうか、アトム誕生は今年で20
周年記念か。