渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

ホンダVツインマグナ

2024年09月09日 | open
 
この車は排ガス規制で消えた
が、実際に跨ってみると、ポ
ジションの作りが秀逸でピタ
リと決まる造形になっていた。
デザイン的にも悪くない。
エンジンは回転リミットがか
かるモデルだったが、レギュ
レーターを同メーカーの別物
にポン着けで交換すれば、淀
みなく回転が上まで回るよう
になる機種だった。軽快、快
速。
レーサーレプリカのように爆
速ではなかったが、面白い
オートバイとして完成度が
高かった。さすがホンダの
手腕、というような二輪だ
った。
ハンドルは広く見えるがそう
でもない。跨ってハンドルを
握った感想は、1970年代の
クールスハンドルを着けた
ヤン車のような感触。

どうしてデザインやポジショ
ンが優れたこのモデルの後継
機種があんなにくそダサ造形
になってしまったのか。
フレーム折れ曲がりのタンク
ぶら下がりで。
だが、そのダサバイクが今は
女性を中心として大人気とな
っている。
日本二輪の歴史の七不思議。
特に現代女性がその後継機種
を大好きだ。
ブームという名の一過性の流
行。
マグナ最高!としてマグナ時
代に女性がバンバンマグナに
乗っているという現象は存在
しなかった。
そもそも女も男も二輪になど
見向きもしなかった空白の時
代だった。

俄かではない空前絶後のバイ
クブームだった1980年代には、
女性たちは好んでレプリカ系
ロードモデルに乗っていた。
女性ライダーの数もわんさか
といた。サークルの女の子が
丸ごと自動二輪免許を取って
乗り始めた、などという大学
のサークルさえもあった程だ。
世の中右を見ても左を見ても
女性ライダーだらけというの
が1980年代だった。一番多か
ったのは50原チャリ主婦層だ
ったが。主婦たちは買い物に
ミニバイクを誰もが使ってい
た。
その頃20代だった若者は今は
50代後半~60代中半位の年に
なっている。当時の主婦層は
今は70代後半から80代中半。
当時の女性たちのうち若者は
ロードスポーツに好んで乗っ
ていた。
足つきがぁ、とかでバイクな
ど選択しなかったし、トロい
ゆっくりオートバイをあえて
好む(しかもフォルムがくそ
ダサ)という傾向性はゼロだ
った。ゼロ。
今はカブが「おしゃれ」とか
言ってるのが大勢いる時代だ。
カブはダサバイク=とっつぁん
バイクの代名詞だった。
だが、カブの真骨頂は実用第
一主義を貫いて、その存在感
と生産台数で世界一になっ
事だ。
カブの実力はその骨太さにこ
そあり、「オシャレなぁ」と
かの佻浮薄な感性とは真
にある。
 
ホンダスーパーカブをポジテ
ィブに表現したのは1981年
週間プレイボーイ連載の劇
『ケンタウロスの伝説』
が初
めてだった。
それでもそこでは女の子から
「さえないねぇ」と言われて
いる。それが当時のカブに対
する世相を表している。
カブは決して「オシャレ」な
どではなく、真逆の立ち位置
にある二輪だったのだ。


カブでレーサーTZの練習に
なるのか、というと、実は
なる。知見を以て乗れば。
なお、このシーンは2年後に
連載開始の『バリバリ伝説』
のカブシーンの下敷きにな
っていると思われる。
というか、バイク屋でのグン
と店主のおっちゃんとのやり
取りは、この『ケンタウロス
の伝説』からの写し焼き(良く
言えばインスパイアパロディ、
悪く言えばパクリ)である事
間違いない。
東本による大友克洋作品「ハ
イウェイスター」の白バイ
け師の話丸ごと全部パク
リ程で
はないにしろ。
バリ伝カブのシチュエーショ
はケンタウロスの伝説が下
敷き
だ。
 
なんだか、世の中、人が変わ
った。
男子だけでなく女子校生さえ
もが抱くカブへのイメージは
1980年代はこれだった。
カブは遅くてトロくてダサい
乗り物、という「妥当」な判
断が定着していた。

1980年代の歴史的金字塔二輪
劇画である『バリバリ伝説』
(1983〜1991)での描写。







 





 


この記事についてブログを書く
« 映画『ハート・オブ・ストー... | トップ | バリバリ伝説の前章 »