渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

サシガネ

2022年11月02日 | open


「サシガネ」である。指矩と書く。
寸表示。真鍮製。
私は日本刀の金具計測の時に使っ
ている。

計測器として重要な角には鋼鉄が
埋め込まれている。


七寸五分。尺貫法。
私が生まれる2年前に公的取引の
仕事では使用禁止となった。
見せしめで、まだメートル法では
なく尺貫法で計測していた大工さ
んが軒並み逮捕されたりした。

刀剣界も正式表示はメートル法で
表示しなければならない。
並列表記で何寸何分と記すのは
黙認されているが、1958年以前
の日本の表記のように寸尺分だけ
で業として取引すると摘発対象に
なる。
「百貫デブ」は消滅したのだ。

サシガネは目盛りで長さを測る
だけでなく、この精密な直角と
側面の直線が命。
それゆえ、ビリヤードキューの
タップ交換などでカッターの刃
の平部分を当てて平面確認をす
るなどというのは、計測の掟を
知らぬど素人計測であると断言
できるのである。
正しくは、カッターの刃を使って
観測する場合には、刃の背の部分
を垂直に当てて光の抜けの有無を
見る。
砥石を面磨りした時の面一かどう
の平面確認の時も、このように
して確認する。

測量機器は正しい使い方をして
初めて正確な数値や状態を観測
できる。
旋盤を使うキューメイキング動画
などでも、金属ノギスの先で木材
にへこみ疵を引いて毛引して目印
としている人もいるが、とんでも
ない間違いだ。
モノサシで釘を叩く事はしないよ
うに、計測器を鉄筆代わりにする
というのは、「やってはならない」
事なのである。
ある超有名な刀鍛冶が、L字のかね
じゃく(サシガネ)で刀身を計測して
そのサシガネを後ろに投げ捨てる
事をする動画を動画サイトで観た。
とんでもない事をすると感じた。
いや、感じたのではなく、それは
やってはならない事なのだ。
いくら有名だからと、仕事の基本、
基礎を蔑ろにする人なのだなぁと
感じた。
だから人の刀を自分の作だと偽って
カブトを斬ったとか言えるのかどう
かは私は与り知らない。
ただ、刀身鍛えの途中で大切な計測
器であるサシガネを空缶を後方に捨
てるようにほっぽり投げていたのは
事実だ。
どうかモノサシは大切に。
モノサシだけではなく、人が作った
物は大切に。

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