渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

映画『シークレット・サービス』(1993)

2021年01月26日 | open

シークレット・サービス(1993)

久しぶりに観た。
撮影時、62才のクリント・イーストウッド
が何故か80才位の老人に作品では見える。
演技なのか演出なのか地なのか判然としな
い。
作品中では、J.F.ケネディを警護していな
がら護り切れなかった若き日のクリントも
登場する。
そして、それを長年負い目に思いながら、
仕事をやり切ろうとする老齢のSPを演じ
いる。
1992年。時の大統領を暗殺しようとする
元CIAの腕利き暗殺者をクリントは執念で
追う。

物語の主人公のクリントのディティール
はもろに『ダーティー・ハリー』の型破り
刑事ハリー・キャラハンのキャラクター
のままだ。
ハリーが暴力刑事を辞めてちょっと品の
あるSPになったような感じ。
犯人追跡途中での古いビル群の屋上を何度
も飛び渡るシーンや、高層ビルでの墜落
シーン、同僚のSPが犯人逮捕のすんでの
ところで犯人に射殺されてしまう設定等、
もろに『ダーティー・ハリー』である。
だが、今回は最後に恋愛譚を差し込んだ。
1993年当時にあっても、表現描写と手法
が古典的で大時代的な映画作品にあえて
仕上げてあり、なかなか見応えがある。
これは「映画」だ。
この映画、最初にちらりと登場する拳銃は
4インチだがSWマグナムだ。
ちょっとしたダーティー・ハリー作品への
お遊び的オマージュだろう。
その後のシーンからは主人公はシグのオー
トを使う。
最初のはなぜあの銃?と思うが、「映画」
としてのサービス的な演出だろう。

ちなみに、主演のクリント・イーストウッ
ド自身は共和党支持者だが、絶対主義者
ではなく、彼はベトナム戦争、湾岸戦争、
イラク戦争等に反対しており、民主党の
議員なども支援したりしている。米国の
外威行使となる戦争すべてにクリント・
イーストウッドは反対の立場を取る。
トランプ前大統領に対しては、あまりの
暴言連発に不快感を明確に表明している。
共和党員としてカリフォルニア州の町の
市長を2年間務めたが、彼の立場は常に
暴力を否定する穏健派のスタンスを崩さ
ない。
ドキューン、バキューンの名無しのブロン
ディは役の上での事なのだ。
クリント・イーストウッドの役どころで
私が一番好きなのは『戦略大作戦』(1970)
での降格将校ケリーだ。あれ最高。
オッドボール役のサザーランドにかなり
食われ気味だが、あの作品はクリントなし
では成立しない。あのケリーの役はクリン
ト・イーストウッドでないと成立しない。
後年、湾岸戦争に設定を変えてリメイク
作品が作られたがドZ級の駄作になって
いた。監督と役者が駄目だからだ。
ただ、クリントは女性は大好きのようで、
共演した女優や出演させた自身監督作品
若い女優に夢中になってしまうのがクセ
のようだ。
そういう意味でも、ブロンディやハリー
やケリーとは大きく異なる。
あくまで作品上の役どころではあるが、
『許されざる者』の主人公ウィリアム・
マニーが一番素顔のクリント・イースト
ウッドに近いのではなかろうかと、ふと
思ったりする。
現在クリント90才。
まだまだ生きて欲しい。


この記事についてブログを書く
« 映画『オールド・ガード』(2020) | トップ | 西部劇のような店 »