1日1日感動したことを書きたい

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人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「初期マルクスを読む」(長谷川宏)

2011-05-14 19:04:06 | 
筆者は、初期マルクスの著作を読みながら、マルクスが構想していた人間観と自然観、労働観を考察していきます。

初期マルクスの著作とは、「ヘーゲル国法論の批判」「ユダヤ人問題のために」「ヘーゲル法哲学の批判・序説」「経済学・哲学草稿」「ドイツ・イデオロギー」の5つです。

筆者は、「(マルクスには)労働が人間にとって本質的なものだという思いがある。労働をきちんと意味づけ、労働を価値あるものとして提示できなければ、人間社会のゆたかさはその像を結ばないというのが、マルクスの強い信念です。」と述べた上で、マスクスの労働観を次の4項目に要約しています。

1.労働は人間の生命活動であり、生きていることを確証するものであること。
2.労働は自然と人間との交流であること。
3.労働は人間の意識的で自由な活動であること。
4.労働は人間の類的生活を作り上げ、発展させるものであること。

もっとも人間的な行為であり、もっとも人間的な生命活動である労働が、資本主義社会においては疎外されているというのが初期マルクスの主張です。

マルクスの人間観と自然観もこの労働を軸に展開されていきます。「社会的存在としての人間」、「人間の自然化」、「自然の人間化」がキーワードです。

「マルクスは、もっと卑俗な次元で考えます。われわれが働くというとき、自然に対して働きかけるわれわれ一人一人が社会的な存在です。同時に、社会的存在相互の協力を基礎にして新たな共同の関係が成り立つ。人間の自然にたいする働きかけが、人間の社会性のなりたちに重なるのです。人間が自然に働きかけ、そこからいろいろな知識を学び、知恵を身につけ、自然の法則を認識して、自分たちの生活を組み立てていく。それは、一方では自然の人間化であると同時に、人間が自然に寄り添って生きていく、人間の自然化でもある。こういうすがたが、マルクスが考えている自然と人間の、そして人間と人間との関係の基本的なありようです。」

筆者は、「共産党宣言」以降のマルクスの著作をとりあげ、社会変革の実践と経済学への研究対象の特化によって、初期マルクスの労働観や人間観・自然観がどのように変容したのかも考察しています。「階級闘争史観」によって、マルクスの自然観・人間観にもとづくゆたかな歴史認識が、平板なものになってしまったという指摘は、納得できるものがありました。

このブログを書き始めたころに、資本論をあらためて読み直そうという目標があったのを思い出しました。仕事がもう少し落ち着いたら、ゆっくりと読み直していこうと思いました。