1日1日感動したことを書きたい

本、音楽、映画、仕事、出会い。1日1日感動したことを書きたい。
人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「名画はあそんでくれる」(結城昌子)

2011-02-18 19:31:39 | 
韓国に行く飛行機の中で読んだ本。著者は「画家の手もとに迫る原寸美術館」を書いた結城昌子です。



著者は、この本の冒頭で「いい絵には人を励ます力と慰める優しさ」あり、「一生の友だちで」であると書いています。

プラド美術館に行ったときに、ベラスケスに目をうばわれすぎて、ゴヤにたどり着いたときにはくたくたになっていたという話(僕もそうだった!)。ムンクの叫びを見せたときに、多くの子どもたちが「カツラがとんでしまった」という叫びをイメージしたとうエピソードの紹介。モナリザの絵の衣装と背景を代える名画遊び(ポップな髪型と衣装を着けた寝起きのモナリザはとてもいい!!)。フェルメールの「牛乳を注ぐ女」の手首の先だけが日焼けしているという発見や、「空気にも表情がある」というターナーの絵に対するまなざしなどなど。

絵が友だちのように大好きで、何度も励まされてきた言う著者の経験と思いが、一つ一つの文章からとてもよく伝わってきました。読んでいる僕も、とてもハッピーな気持ちになりました。

著者は、この本の最後のほうで「すべての表現行為のはじめには愛とよぶはかない力が深く関わっている」と書き、ボナールと妻のマルトが二人だけで暮らした家を訪れた感想を次のように書いています。

「愛の巣は想像よりずっと質素だった。画家の筆が、ありふれた日常をこんなにも特別なものに昇華させていたのだ。質素な家でのささやかな愛の暮らしを、夢見るように膨らんでいく色彩で埋め尽くすこと。その日、筆を握るボナールの後ろ姿に私は出会ったような気がした。」


ボナール「田舎の食堂」

ボナールとマルトの愛のかたちが、とても素敵に思えた一冊でした。