1日1日感動したことを書きたい

本、音楽、映画、仕事、出会い。1日1日感動したことを書きたい。
人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「奇想の美術館 イメージを読み解く12章」(アルベルト マングェル)

2011-02-07 20:00:19 | 
美術作品を鑑賞したとき、なぜ私たちは心を動かされるのか?それはどこからやってくるのか?ピカソの「泣く女」やカラヴァッジョの「慈悲の7つの行ない」など、12の作品を読み解きながら、「美術作品を見るときに人が考えること」を明らかにしようとした本です。とてもいい本だと思います。

この本を読みながら、吉本隆明の「人はみんな、かわいそうなもんだ。」という言葉を思い出していました。

25年におよぶ愛が終わったあとに、黄色と薄紫の色でキャンバスを埋めて、言葉で表すことができない悲しみを表現しようとしたジョーン・ミッチェルも

経済的な困窮の中で、障害者の子どもたちをかかえながら、男社会の中で画家としてのキャリアを歩もうとしたラヴィニア・フォンターナも。多毛症として知られるアブラムス症候群をわずらい、狼人間として見世物に供せられたあどけない少女も。

メキシコ民衆の社会的現実をカメラでとらえるだけではものたりず、カメラを捨てて革命運動に身を投じ、革命に裏切られ死んでいったエドワード・ウェストンも。

偉大な芸術のためなら、冷酷な行為も、暴力さえも許されると思い、他者に共感するすべをしらなかったピカソも。そして、ピカソの前で泣き続けたドラ・マールも。

白人の男と奴隷のあいだに私生児として生まれ、ハンセン氏病に冒され、片方の目を失明し、歯は全て抜け落ち、指を失いながら、優美で繊細な「白人化」された聖人像を彫り続けたブラジル人アレイジャディーニョも

殺人犯として、逃亡生活を送ったカラヴァッジョも・・・

みんなとてもかなしかったです。絵を見たときの共感はどこからやってくるのか。それは、「人はみんな、かわいそうなもんだ。」という人間の存在のかなしさからやって来るのだと思いました。