1日1日感動したことを書きたい

本、音楽、映画、仕事、出会い。1日1日感動したことを書きたい。
人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「貧困大国アメリカ」(堤未果)

2008-04-22 22:52:40 | 
「貧困大国アメリカ」(堤未果)を読みました。名著です。
新自由主義政策によって、世界一の貧困大国になったアメリカに対する、
直球勝負のルポルタージュでした。

返済額の急騰によって、家ばかりでなく、すべての財産を奪われた移民労働者。
高額の医療費のために、一つの病気で自己破産に追い込まれた中間所得層。
株式会社化した病院で、日帰り出産を強いられる婦人達。
貧困が原因の肥満に苦しむ子ども達。
民営化と市場原理主義がもたらしたアメリカの現実に、心が寒くなるのです。
私たちが住む日本も、決して人事ではないとも思うのです。
社会保障を削減し、貧困層を拡大再生産し、生活に苦しむ若者を軍隊にリクルートし、イラクに派遣する。
貧困層の弱みにつけ込む「貧困ビジネス」の存在に、怒りがこみ上げてくるのです。

マクドナルドとデパートの経営に打撃を与えた移民労働者のデモや、
民間戦争請負会社で働くフィリピンの移民労働者のストライキや、
「米軍リクルートの嘘」をインターネットでアピールするパンクミュージシャン
の闘いに、あきらめたらあかんのやと勇気づけられるのです。

そして、筆者の次の言葉が、読後に、しっかりと心に残るのです。
「民主主義には二種類がある、と私は思った。
経済重視型の民主主義は大量生産大量廃棄を行うことによって、日常生活の
便利さをもたらした。能力主義で目に見える利益に価値を置くこのやり方を
使うならば、戦争はもっとも効率のよいビッグビジネスになるだろう。
 しかし、もう一つ、それとは別の、いのちをものさしにした民主主義という
ものがある。ゴールは環境や人権、人間らしい暮らしに光をあて、一人ひとりが
健やかに幸せに生きられる社会を作り出すこと。前者では国民はなるべくものを
考えないほうが都合よく、その存在は指導者たちにとっての「消費者・捨て駒」
になるが、後者では国民は個人の顔や生きてきた歴史、尊厳を持った「いのち」
として扱われることになる。」