1日1日感動したことを書きたい

本、音楽、映画、仕事、出会い。1日1日感動したことを書きたい。
人生の黄昏時だから、なおそう思います。

美の巨人たち 宮川香山「渡蟹水盤」

2008-01-21 21:14:51 | 美術館
先週の「美の巨人たち」は、とてもおもしろかったです。宮川香山、「渡蟹水盤」。宮川香山も「渡蟹水盤」も、初めて耳にする名前でした。水盤に必死でしがみついている陶器の蟹の精密さとリアルさを見たとき、思わず「すごいなぁ!!」と叫んでいました。
 この蟹を作るには、自ら、土を選び、土をこね、土の性質を知り尽くし、乾燥速度が違う水盤と蟹の部分を調整し、焼き上がり後の形の変化を計算する必要があったそうです。
 宮川香山の作品は、伊藤若冲や浮世絵がそうであったように、海外で高い評価を得、たくさんの注文が寄せられたそうです。海外からの注文をこなすうちに、宮川香山のスタッフは50名をこえるまでになったそうですが、この時、宮川香山は、「技巧を極める」という課題と「50名の生活を支える」という、時には二律背反する課題に直面したそうです。宮川香山は、より簡素な陶器を考案することで、この問題を解決していくのですが、陶器でリアルな造形を作ることは、いったん断念します。番組で紹介された「渡蟹水盤」は、断念から30年後に、死に直面した香山が、最後に作り上げた作品だそうです。
 水盤にしがみつく香山の最後の蟹は、「技巧」と「生活」の間で苦闘し、それでもなお、技巧の極地に向けて飛躍したいと願う、宮川香山の姿そのももであるような気がしました。ぜひ、本物が見てみたいです。