「ああ、天上から真っ白なUFO到来!4本の長いキャッチャーにより、ゲーセンのぬいぐるみのように捕まっちゃうよ~」
植物学者の多田多恵子先生がUFOキャッチャーと表現したイカリソウが青葉の森のいつものところに群れで咲きだした。昔のヒトが船の錨のかたちを思い描いたからイカリソウ。
それにしても複雑でユニークな形をした花である。
いちばん外側の4枚の花びらに見えるのは萼片(がくへん)
その下に細長く伸びた4本の脚は距(きょ)という蜜を貯める貯蔵庫
一番下の小さく筒状に見えるのが4枚の花弁
その奥におしべの黄色いのがのぞいている。
全体としてこの地面を見つめたような下向きの花に、どんな虫たちがやってきて、あの細長い距の蜜を吸うのだろう。
多田先生のお話によれば、マルハナバチの仲間やビロードツリアブなどの長い口の持ち主が器用に花弁につかまって蜜を吸い、お返しに頭に花粉をくっつけて別の花に運んでいくのだという。ビロードツリアブなんかは運動能力が高いから、もしかしたらホバリングしながら蜜を吸うことができるかもしれないが、しばらく観察を続けてもハチたちはやってこなかった。
そんなことで、めでたくタネを儲けたら、あのカタクリたちと同じようにタネにゼリー状のエライオソームというアリさんの大好きなお菓子をくっつけてタネを地面に散らすのだという。
花の時期が終わったら、また青葉の森のその場所に行ってみて観察してみよう。アリさんの行列ができているかも。
それにしても、イカリソウ、薄紅色だけでなく、こんな純白の花や、色の濃淡も様々で、その場所にの花たちは多彩だ。色合いといい、不思議なかたちといい、愛すべき4月の花だ。
ちょっと重いがD750君とマクロレンズを持ち込んで少しはきれいに撮れた日。
マキノスミレさんも傍らにぽつんと咲いていました。
Youtubeのダニエル・バレンボイムさんのサイトから、1970年に録音されたと思われるベートーベンのピアノトリオ№1の甘いアダージョ・カンタービレが流れてきた。奥様のチェロ奏者ジャックリーヌ・デュ・プレさん、バイオリニストのピンカス・ズーカーマンさんとの若き日のトリオ。
デュ・プレさんは、この後、難病とされる多発性硬化症に冒され、演奏家を引退、後進の指導をしたが1987年42歳の若さで逝ったのだという。
まさに、スプリング・エフェメラルのように美しくもはかなく消えたが、地に落ちたタネがまた花を咲かすように、いつまでも心に残っている演奏家。この楽章は、春の林床の花たちが奏するみたい。