古いマンションの古い食器棚の奥に、尾西食品の「アルファ米白飯2食分」二袋がおいてあった。いつごろ買ったものだろう。石井スポーツ450円のシールが貼ってあり(高いな)、今とは袋のデザインが異なることから、少なくとも10年くらい前に買って、山行の余りとして置いていたものだろう。少なくとも、災害のストックとして買いだめしておいたものではない。
これからの山行に持っていこうとも考えたが、賞味期限を見ると2017年9月とあり、すでに2年以上経過していた。乾燥米なので、今食べるのに健康上全く問題ないとは思ったが、何となくまずそうだったので、かといって捨てるのはもったいないと思ったので、(悪意はないが)近所にたむろするスズメたちのエサとして、ベランダに毎朝一握りだけ撒くことにした。夏の間は、餌となる昆虫がたくさんいるのだから、餌やりはやめるが、冬はさぞ餌に乏しいのだろうとの老婆心なのであるが、なぜか彼らは、まるまる太っている。
アルファ米をやる前は、少し玄米をやっていたのだが、アルファ米を撒いたらよっぽど気に入ったとみえて盛んに飛んでくるようになった。10数羽のグループである。窓を開けると、どこから気配をかぎつけるというのか、近くの植え込みに留まってこちらを見ている。
はじめは、ものの四五分で啄み、あっという間に飛び去って行くという日々が続いたが、ある日から雀の体の大きさの4,5倍はあろうかと思われるヒヨドリのカップルがベランダに舞い降り、スズメたちを追いやり独善的にアルファ米をせしめようとするようになった。
スズメたちにとっては、決してヒヨドリが天敵ではないのだが、数倍体が大きいヒヨドリはスズメの頭上から羽切音をうならせて集団を追い払う。
縄張り意識の強そうなヒヨドリは、こちらがアルファ米をベランダに撒くと、スズメたちが近づいても追い払うようになった。その作戦は、まず一羽が啄み、いいところで飛び去る。瞬時に近くで待機してスズメたちを監視していたもう一方がやってきて啄む。まるで、スズメたちにスキを与えないというチームワークだ。
スズメたちは、ヒヨドリを煙たがり、しばらくはあまり近づかない日が続いた。
ところが、今日のスズメ軍団はどうだろうベランダの床にやってきてヒヨドリが落としたおこぼれのコメをつついたり、ヒヨドリが、ちょと目を離したすきに、ベランダちょこんと乗っかって、どうどうと啄むようになってきた。
そして、とうとう、誰かが見張りをしていたのだろうか、まずヒヨドリがある程度お腹を満たしてベランダを離れた間隙を縫って、10羽ばかりの集団が瞬く間にやってきて残りの米粒すべてをかっさらって行った。
スズメたちは、どうやら学習したようだ。無駄な抗争はやめにして、まず、ヒヨドリのカップルにアルファ米を食べてもらう。数十粒のアルファ米はヒヨドリのお腹の中ですぐに膨らみ、カップルは場所を離れてサザンカの藪の中あたりで、しばし休憩。縄張り意識による警戒が緩んだそのとき、一気呵成に舞い降りて残りのお米を食べつくす作戦に移行したようだ。
ほんの一握りの数百粒のアルファ米を巡っては、いましばらく続くのだろう。
賞味期限切れのアルファ米あと一袋残っている。鳥たちに健康障害はなさそうだし、ほんのひとにぎりなので、近所迷惑にもならんようだ。冬の間、家にいるときは、もうしばらく、やってみて抗争の成り行きを見守っていこう。
縄張り意識の強いヒヨドリは、いつも近くで監視しているようだ。