叙事詩 人間賛歌

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人間賛歌 生命の境涯 十七

2006年11月11日 | 生命の境涯

  タイタニック号の最期 続き

 その後、この紳士は、船と運命をともにした。
タイタニックは、破れた船底から海水が入り、
船体はだんだん、傾いていった。

その甲板の一隅で、アメリカの退役軍人の婦人が、
ボートに乗る順番を、待っていた。
婦人は、夫の退役記念にヨーロッパを旅行し、
帰国の途中で、この災難にあったのだ。

乗船の番がきて、婦人はボートの縁に足をかけたが、
思いなおして、乗るのをやめた。

「私は、もうトシですからだれか若い人に、
かわってもらってください」

と言うと、甲板の一隅で寂しそうに婦人を見送っていた、
夫のそばに、戻っていった。
婦人は、
「いままでづっと、あなたと一緒にやってきたのですから、
これからも、あなたと一緒にいたいわ」

と言って夫と腕を組み、やさしく肩をならべた。

そのとき、傾いた甲板の船尾のほうから、
賛美歌の曲が、流れてきた。
タイタニック号の、楽団員たちが、
乗客の不安を、鎮めようと、演奏を始めたのだ。

浸水で、船体はますます傾き、
海面に、落ちそうになりながら
楽団員たちは、だれひとり欠落せず、
整然と、演奏をつづけた。

その健気な姿に、おおくの人たちは、勇気づけられ、
これから迎える、最悪の事態に、立ち向かえたのだ。

生き残った、ひとたちの証言によると、
船が沈むまで、かれらは演奏をやめなかった。
またかれらの内で、自分の持ち場を放棄したものは、
ひとりもいなかった。
と伝えられている。  つづく

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