山田くん、
「教授、そのエネルギーのことですが、
よく先輩から生命力をつけてと言われますが、それのことですか。」
田中教授、
「そう、ひとことで言えば生命力ということになるね。
でも生命力と言っただけでは抽象的で、具体的に何をなす力なのか
イメージしにくいと思うね。
たとえば一個のドングリの実が樫の大木になったり、地球が秒速二十キロの
猛スピードで太陽の周りを公転したりする力、それも生命力と言えるだろう。
宇宙を動かす大きな力になったり、
ドングリが芽を出し成長するという小さな力にもなる。
すべてのモノを創造する力、それが生命力だね。
暴力も力の一種ではあるが、価値を造らず逆に破壊するから生命力とは
いえないね。
私たちは力というと、目に見える形で現れるか、頭で想像できる範囲内で
認識するが、目に見えないが人間の想像をこえた価値創造をする力、
それが生命力と言えるだろう。
生命編で、氷河期にぶっかった人類が飢餓に直面したことがあったね。
あのとき土地を耕し自生していた麦の種をまいたことが、食料生産のきっかけになったが、
そのとき取れた実は、自生のものより粒も大きく、
柔らかくて食べやすかったと伝えられている。
人間の努力に対して目に見えない力が応援し、期待していた以上の麦が
取れるようになったのだ。
これを当時の人々は、天の助け(神の恵み)とし、感謝しあがめたのだ。
コトバで説明しがたいが、
人間が目標を持ち、正しい方法で努力を続けるとき、思わぬ力が援助する
ことはよく知られているし、絶対間違いないのだ。
二宮尊徳翁は、
「天というものは慈悲深いもので、いつも人間を助けよう、助けようとするが
人間のほうがそれを避けよう、避けようとしているのだ。」
と言っている。
天は正義を好む、欲に刈られた人間が正しい行いをしないのを諭した言葉なのだ。
続く