叙事詩 人間賛歌

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「目覚める人・日蓮の弟子たち」 二

2010年01月06日 | 小説「目覚める人」

 北条小源太 二

「弥太郎、まだ街道は人通りがあると思うので、海岸伝いに行く。
 目立たぬように供はそちだけでよい。馬を廻してくれ」

弥太郎は、はっ、と応えて出て行った。

「彦四郎、近所をお騒がせせぬよう馬はいつもの所に置いて、上人の
お住まいには歩いて行くようにな」

「はっ、かしこまってございます」

彦四郎は、小源太に礼をして足早に出て行った。

「節はいるか」

小源太が呼ぶと待っていたように女中の節が入って来た。

「節、奥には急な用事で大学どのの所へ行く、帰りが少し遅くなると
言っておいてくれ。それから、彦四郎の家に使いをやって、急な用事
で亭主どのは二、三日帰れないかもしれないが、大事はないので心配
しないように伝えてやってくれ。
子供に菓子など持って行ってやるのを忘れぬようにな」

身の回りの世話をする女中の節が、渡す太刀を受け取りながら、小源
太は早口に言った。

「かしこまりました。急なお出向きで何か変事でも起こりましたので
しょうか」

節は、奥方の雅子に聞かれた時のことを思い、太刀を受け取ってその
まま部屋を出ようとする小源太に聞いた。

「いや、大事ではない。急ぐので奥には、戻ってからわけを話すと言
ってくれ」

と言うと小源太は大股で裏口に向かう渡り廊下を歩いて行った。

続く