叙事詩 人間賛歌

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人間賛歌 幸運を呼ぶ法則 十六

2008年08月05日 | 幸運を呼ぶ法則

 心は伝染する

 九州の宮崎県沖に幸島という小さな島がある。
この島は無人島で百匹ばかりの野生のサルが住んでいる。サルたちは木の実や草の根をエサにしていたが、とぼしくなったので人間が餌つけをしてサツマイモを与えるようなった。

 初めのうちサルたちは、ドロや砂がついたままサツマイモを食べていたが、ある日サルたちのあいだに異変が起きた。一匹の若いメスザルが海水でサツマイモを洗って食べたのだ。
 これを見ていたほかのサるたちは、「へんなことをするなあ。」と思ってメスザルの動作を眺めていたが、
メスザルが次の食事のときもイモを海水で洗って食べたので、好奇心にかられ、

 「自分たちもやってみよう。」と真似してイモを洗って食べたのだ。

やってみると海水でドロや砂が落ちて食べやすいうえに、塩かげんがほどよく効いてこれがなかなかいけるのだ。これが島中のサルに伝染して、ガンコなボスザルをのぞいた島のサルが、みんなイモを洗って食べるようになった。

 「ちかごろ若いもんのあいだに、へんなことが流行っているがワシはやらないぞ。」

と言って最後まで新しいやりかたに抵抗していたオスのボスザルが、

 「このままでは自分だけみんなにおいていかれる。」と懸念したのか、観念してイモを洗って食べるようになったので、この島に住むサル全員に新しい食文化が行き渡った。

 それから不思議なことが起きた。海をへだてた大分県の高崎山のサルたちが、イモを洗って食べるようになったのだ。さらに不思議なことは、遠く離れた本州に住むサルたちも、イモを水で洗って食べようになったのである。

 このことは、最後まで新しいやりかたに抵抗していたオスのボスザルが百匹目に当たっていたので、百匹目のサル現象、と呼ばれ、動物学者のあいだで有名になった。
 人間と違ってテレビや電話などの通信手段を持たない、遠く離れたサルのあいだでどうしてこんなことが起きたのか、学者が研究しているがいまだに解答は出ていない。

 いままで述べた現象は偶然起きたようにみえるが心が伝染するよい例である。

人間が傲慢になり、自分より弱い立場のものに暴力を加えると、動物のあいだにもそれが伝染するし、遠く離れた場所であっても同じような現象が起きるのである。
百匹目のサル現象は、いまよりもっと良くなろうという向上心が、距離を越えて伝っていったよい例であり、このような現象はこれ以外にもいくつか知られている。