聖徳太子続き
その場に同席していた、聖徳太子は、
これはよくないことを、なされた。もしこのことが人に知れたら、
帝の災いのもとになるだろう。
このことは、絶対内密にしなければならない。
と考えた。
太子は、その場にいた者たちに、金銀の宝をあたえて、
「このことは絶対口外しないように」
と命じた。
それからしばらく経った。
だれも知らないはずのこのことが、蘇我の馬子の耳に入った。
かねてから、帝が、自分のことを心よく思っていないと、
感じていた馬子は、帝が口走った、
「憎いヤツ」とは、自分のことに違いないと、思った。
このままでは、自分の身が危ない。
恐れた馬子は、
アヅマアヤアタイゴマ、アタイイワイの、
二人の渡来人に、スシュン帝の暗殺を命じた。
こうして、スシュン天皇は史上まれな、臣下による暗殺で、
あたらいのちを、落としたのだ。
スシュン天皇の死後、すぐ女帝のスイコ天皇が即位した。
聖徳太子は乞われて、摂政になり、スイコ天皇をたすけて、
政務をつかさどった。
太子が二十歳のときであった。
上宮王子< 聖徳太子の幼名、後に太子の徳を讃えて聖徳太子と、
呼称した> は、
父、用明天皇、母、アナホベノハシヒトおおきさきの、
長子として生まれた。
おおきさきが散策中、産気づいて、厩のなかで出産したので、
厩戸の王子ともいわれる。
用明天皇は、太子をこよなく愛し、皇居の丘の上に御殿を建てて、
住まわせたので、上宮王子とよばれた。
太子は非常に聡明で、一を聞いて八を知り、
同時に八人が言う事を、理解できたといわれる。
つづく