普通な生活 普通な人々

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奥さんは魔女 その2

2010-12-03 15:38:35 | 思いもよらない未来<的>な
 ボクの奥さんは<医者>だと書いたが、もうひとつ事例を挙げておこう。
 あれは6~7年前だったか、奥さんが突然「病院に連れて行って」と言った。朝5時のことだ。ボクは眠い目をこすりながら、すぐに準備をした。奥さんがこう言う時は、かなり事態が悪化しているということなのだ。すぐに車に乗せ、はじめて「どうしたの?」と聞いた。なんだか大きな荷物を抱えて「喉が痛い」という。
 車で10分ほどのところに夜間診療の受付がある総合病院があった。そこに向かった。すると「他にないの?」と聞く。他のところは遠いし、夜間診療があるかも分らないと言うと、「仕方ないか…」とつぶやいた。
 殺風景で乱雑な病院の内部だった。どう見てもインターンとしか思えない宿直の青年医師が、20分も待たせた挙句現れた。眠そうな腫れぼったい目をしていた。
 なんだか乱雑な廊下のベンチで診察の終わるのを待つ。だが、いつまで経っても奥さんどころか病院関係者の姿すら見えない。およそ2時間が経った頃、さすがのボクも業を煮やした。あちこち歩き回り、ナースステーションを見つけると、眠そうな目をした看護士に「妻はどこか」と荒っぽく尋ねた。「入院」と眠そうに答えた。7時を回っていた。
「なんだって? どうした?」
 ベッドに横になり点滴を受けている奥さんに矢継ぎ早に聞く。
「なんだか、ヘンな病院」
 奥さんはポツリと言う。診察すると医師は眠気も覚めたように、説明もないまま「入院が必要」といったそうだ。「一度戻って入院準備を」と続けたそうだが、奥さんは「もうできてます」と大きな荷物を見せたという。即刻入院。
「多分溶レン菌にやられたんだと思う」と彼女は言った。2日も入院して点滴すれば治ると奥さんは言った。
「焦ることはないけれど、放っておいたらどうなっていたか分らない」と物騒なことも言った。
 それにしても! 早朝に病院に行ったボクたちだったが、本当に乱雑で汚らしい病院だったのだが、入院したその日の夕方に、仕事を終えて見舞いに行くと、ぴかぴかの病院になっていた。
「なんだか嫌な感じがしたんだけど、今日が病院の転居日なんだって。なんでまたよりによってそういう日にね……。今朝入院していた病室は前の建物、そしてここは新しい病室」
 きっちりと、朝の診療開始時間に、病室も移らされたそうだ。
 奥さんは結局、予言どおり、2日間入院して帰宅した。「家に抗生物質があれば、もしぶり返したとしても大丈夫だから」と、てんこ盛りのクスリをせしめて、戻ってきたのだった。


 


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