普通な生活 普通な人々

日々の何気ない出来事や、何気ない出会いなどを書いていきます。時には昔の原稿を掲載するなど、自分の宣伝もさせてもらいます。

トイレの電気が突然……!?

2011-08-16 23:01:53 | 超常現象<的>な
 久しぶりに、「おぉ!? 怖ゎっ!」シリーズ。
 
 あれは今から、ちょうど1ヶ月前の7月の半ば、16日のことだった。
 とある印刷会社の東京近郊にある印刷工場に行った。
 その日は土曜日で、出社する社員も少なく、いつもは大勢いるアルバイトやパートの社員も少なかった。広大な敷地の印刷工場はひっそりとして、いっそ薄気味悪いほどだった。

 例年ならまだ梅雨のまっただ中で、鬱陶しい時節のはずなのだが、すでに真夏の暑さだったが、アーケードの続く日陰のストックエリアは誰もおらず、いつもは走り回るフォークリフトも鳴りを潜め、印刷工場の佇まいの静かさだけが異様な雰囲気を醸し出していた。
 それにも増して、狭い廊下で繋がる印刷棟、校正棟などは数人の人間が巨大な建物のほんの一角で仕事をしているような塩梅で、まことに寂しい限りだった。
 
 僕は3階で校正の仕事をしていた。その場には10人ほどの校正マンが詰めていたが、部屋は校正のためにあるにも関わらず、天井の蛍光灯は、半分が抜き取られていた。節電だそうだ。こういうところは正直、まったく理解はできない。ケースバイケースで臨機応変にできないものかとも思うが、そうもいかないなにか理由があるのだろう。
 
 何時間か経って、トイレに行きたくなった。だがトイレは、ほとんど電気も点いていない廊下を2階まで降り、薄暗い廊下を100mほど行った、建物の端にあった。
 空調も入っていない蒸し暑い廊下を進み、廊下よりさらに暗い階段を下り、さらに続く薄暗い廊下を歩き、ようやくトイレのある場所に着いたが、見事に真っ暗だった。
 
 トイレの扉を開けると、一本の蛍光灯に照らし出された、だだっ広いタイル張りのトイレがそこに広がっていた。「ここも省エネかい」と思った。なぜか窓のあるはずの部分に無造作にベニヤ板が張られて、パタパタと音を立てている。どうにも言いようのない、重苦しく暑い空気が漂っている。
 
 それでも仕方がない、サッサと用をたそうと3つ並んでいる「朝顔」の真ん中の前で一物を取り出し、いままさに用を足すという瞬間、「パキン」と音がして、真っ暗になった。蛍光灯がなぜか破裂した。
 
 出るはずのものも止まってしまった。そのまま、真っ暗な中を扉のあったはずの方向に走り、扉を開けた。と、何かがぶつかってきた。
「フゲーッ」と声にならない声を上げてしまった。

 向うも驚いたろう、トイレのネクストユーザーだったに違いない。だが、中も外も真っ暗だ。
 お互いに、顔もわからない。こちらは怖さのあまり、ただその場から離れたく、脱兎の如く逃げ去ろうとする。
 おそらくのネクストユーザーはわけもわからず、「フニャ」と言った声を出し、その場に腰から崩れ落ちた。
 僕はひたすら逃げた。気がつくと、ズボンの前は開け放しだった。慌てて前を締め、校正室に戻った。もちろんなにごともなかったように。

 部屋の中はクーラーが多少は効いて涼しかった。
 だが、クーラーのまったく効いていない廊下を全力で走り階段を駆け上がったのに、僕は汗のひとつもかいていなかった。
 ずっと、ゾッとしっ放しだったから。
 あの工場へは、二度と行きたくないと、思っている。
コメント
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