普通な生活 普通な人々

日々の何気ない出来事や、何気ない出会いなどを書いていきます。時には昔の原稿を掲載するなど、自分の宣伝もさせてもらいます。

僕は見た!あっけない、頓死の瞬間

2010-10-22 13:50:36 | 超常現象<的>な
 もう優に20年近く前のことだが、忘れられない一日があった。
 当時僕はフリーの編集者・ライターとして(いまもだが)、現在はドンキホーテの傘下に入ってしまっているが、老舗のホームセンター「ドイト」で「ドイト・クラブ」という販促誌を作っていた。本部のある与野本町に、月に数回打合せで出向いていた。
 そんなある1日の出来事。
 与野本町駅から17号線バイパス沿いの本部に向かって歩くと、一本手前に17号と並行して走る道に出る。
 その道を渡るために、信号待ちをしていると、左手方向から1人の中年男性が両手に大きな紙袋を提げ、とぼとぼと歩いてくるのが見えた。見るでもなくその男性を見ていたのだが、彼が突然両膝をつき、前に突っ伏した。尻を突き上げ、顔面と膝でバランスを取って突っ伏している。顔がこちらを向いていて、よく観察すると目を見開いているではないか! 
「あれ、危ないな」と、信号が変わるのを待ち、突っ伏している彼に近づき「どうしました?」と声を掛けた。「もしや?」とは思ってはいたのだが、やはり彼はまったく無反応だった。
 死を迎えると瞳孔が開くというが、そんな事までは判らない。周囲には人影がなかったが、ちょうどバイクで通りかかった青年がいた。僕は咄嗟に彼に合図をし、停まってもらうと「この人、死んでいるようだから警察と消防に電話をしたい。車がくると危険だからここで車を誘導して。彼に触れちゃダメだよ」と告げ、ちょうど向かいの店先に公衆電話があったので、そこからしかるべきところに電話をした。
 それからしばらくして、警察も救急車もやってきた。やはりその中年男性は死んでいた。正直、驚いた。だって、彼が普通に歩いて来るのを僕は見ていた。それほど辛そうでもなかった。なにか、例えば急に心臓が苦しくなってというような素振りもなかった。ただ、糸が突然切れたマリオネットの人形のように崩れ落ちただけなのだ。
 種々聴取もされ、解放されたのは1時間半後だった。打合せには大幅に遅れた。一応遅れる旨の電話は入れておいたのだが、遅れた理由を正直に話しても、誰も信用しなかった。それはそうだ、信用できない類いの作り話みたいだもの。
 
 今日ここでこんな昔話を書いているのは、この日がこれだけで終わらなかったということを思い出し、確認し記録しておこうと思ったからだ。
 予定より1時間半押しで打合せを終えた僕は、次の待ち合わせのために新宿に出向いた。もう暗くなっていた。そして新宿通りからバスに乗り、早稲田方面に向かった。僕は横長の座席の、ちょうど昇降口の前に座っていた。僕の乗った停留所から二駅目で、1人のご婦人がバスから降りた。そして彼女がバスから降りきった瞬間、彼女が消えた。
「!?」
 一瞬なにが起きたか判らなかったが、嫌な予感がした。僕は慌ててバスステップを降りて、左右を見回した。すると、5mほど先の道端に、彼女は倒れていた。直ぐに近づくと、彼女は頭から大量に出血し、息をしている風もなかった。彼女の倒れていた場所からさらに15mほど先に、バイクが倒れたまま置かれ、ライダースーツを着た若い青年が、走りよってきた。
 バスが、バス停から離れて停車し、バスと歩道の間が広く開いていたせいで、バイクが突っ込んできたことによる死亡事故だった。
 まだ終わらない。ようやく都内での作業を終え、なにかモヤッとした感じを抱え、帰路に着いた。そして当時住んでいた中央線日野駅を降り、家まで戻るたった10分間の間に車同士の出会い頭の事故を見た。その事故で人死にがあったかは、見ざる聞かざるということにした。
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「うめ吉」新譜に込められた 日本芸能の楽しさ、奥深さ

2010-10-22 10:37:47 | 音楽にまつわる話<的>な
うめ吉
ALL ABOUT UMEKICHI
OMCA-1132
3000円
7月21日発売
オーマガトキ

かれこれ30年前、初代の櫻川ぴん助師匠が倒れられる前に、運良く取材ができたことを思い出した。当時はまだお元気で、四谷の自宅にうかがい「最後の幇間」と言われた、味わいのある、枯れそうで枯れないお座敷芸のいくつかを見せていただいた。いまは娘さんが2代目ぴん助として活動されているが、おそらく芸風も醸し出す空気も、まったく別のものだろう。
このアルバムをもし聴かれたなら、「いよいよ、良い良い感じでげすな!」 と、初代のぴん助師匠は言ったことだろう。存命ならの話だが……。

日本の芸能の頂点には能だの狂言だのが君臨し、ちょいとあざとい歌舞伎や話芸の落語、そうした芸能を支える囃子方(はやしかた)、そこからそれぞれに派生する俗曲など多岐に渡るが、いま時は、伝統の灯を消すまいと、あるいは世襲のようにそれぞれを継承するようなで、言ってみれば一種の閉鎖社会が出来上がっている。
中には、歌舞伎の十八代目勘三郎や十二代目團十郎などの革命児もいるが、全体としてみると、やはり閉鎖社会と思わざるを得ない。

【芸能社会の片隅で独り気を吐く俗曲師】

そんな日本的芸能社会の片隅で、なんだか独り気を吐いているように見えるのが、うめ吉姐さんだ。落語芸術協会所属の俗曲師だが、活動は多岐に渡り、広く深い。
CDひとつとっても、小唄、長唄、都々逸はもとより明治・大正の流行り歌に、昭和歌謡、童謡に民謡……と、おそらくいまではうめ吉姐さんしか歌わない歌を、片っ端から聴かせてくれるのだ。
そのうめ吉姐さんが、2000年から「檜山うめ吉」として活動をはじめて10年。その10周年を祝って出されるのが、この『ALL ABOUT UMEKICHI』。
なにしろ全21曲、未発表のオリジナルから未発表の「お富さん」、フランス語、ドイツ語の曲、民謡から昭和歌謡まで、とにかく多種多彩な曲が並ぶ。余談だが、「お富さん」は僕がはじめて全部憶えた記念すべき1曲でもある。だから思い入れもある、正直いま聴けるのが嬉しく、楽しい。

この楽しさは、実に30年前、あのぴん助師匠を取材した時に感じた「いま生きている」日本の芸能の楽しさ、奥深さに通じるものがある。

とにかく無条件に楽しい。

(この原稿は、J-CASTニュースのコラム「音盤見聞録」に書いたものです。
→ http://www.j-cast.com/mono/2010/07/19071294.html)

【ALL ABOUT UMEKICHI  収録曲】
1. 雷ロック (オリジナル新曲)
2. 銀座ロックン
3. 五月雨恋唄 (オリジナル新曲)
4. SUTETEKO (クラブバージョン)
5. YAKKO・SAN (クラブバージョン)
6. ホームランブギ
7. ヘイへイブギ
8. ニャンニャン踊り
9. 三味線ブギウギ
10. 鹿児島小原節
11. 隅田ばやし
12. 祇園小唄
13. 買い物ブギ
14. お富さん
15. 東京音頭
16. 酋長の娘
17. セ・シ・ボン (フランス語)
18. ウィーン我が夢の街 (ドイツ語)
19. さよならを教えて (フランス語)
20. 都々逸
21. 山中節

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