労働保険・算定基礎届出の申告期限は、どちらも毎年7月10日です。決算のように会社毎に申告時期に違いがないため、全国の会社が一斉にこの時期に届出をします。労働者のケガ・病気に対しての給付金、老後の年金給付等に係る大切な届出になりますので、漏れなく正しく申告しましょう。
①労働保険、社会保険とは
労働保険とは労災保険と雇用保険の総称です。
社会保険とは健康保険と厚生年金保険の総称です。
*労災保険料だけは全額を会社が負担する理由…
労働基準法では、労働者が業務上ケガや病気をした場合には、会社が全て負担して補償すべきとされています。しかし、補償額が多額になる場合が多く、補償し切れないというリスクから会社と労働者の双方を守るべく、国が保険料を徴収し、業務災害が起こった際には、会社の補償義務を肩代わりするという保険制度が「労災保険」の性質だからです。
②労働保険の概算確定保険料申告の仕組み
当年4月1日から翌年3月31日まで(支払月ではなく労働した月)の対象期間の賃金総額を見積もり、概算保険料を前払いで申告納付します。そして、対象期間が終了した時点で、実際に支払った賃金額に基づく確定保険料と前年度に納めた概算保険料との差額精算のためにもう一度申告します(納付又は還付になります)。事業が継続する場合には、毎年、今年度と前年度の2つの期の保険年度について、概算・確定の申告をする仕組みになっています。なお、令和5年度は雇用保険料率の改定がありました。
●納める保険料の額 = 概算保険料 +(確定保険料-前年の概算保険料)
*概算保険料 = 今期の賃金見込額 × 保険料率
*確定保険料 = 前期の実際の賃金額 × 保険料率
③労働保険料の計算と延納
労災保険の料率は、労災事故が発生しやすい業種ほど高く、個別に設定されております。例えば サービス業の事業所で年間の賃金総額が1億円(役員分を除き全員が雇用保険の被保険者の場合)であれば、令和5年度の概算保険料は185万円になります。
・1億円×合計保険料率0.0185=185万円
((労災保険料率3.0)+(雇用保険料率15.5))/1000
・185万円の内60万円については、従業員負担分として給与・賞与の支払時に徴収します。
概算保険料が40万円以上になる場合は、年3回に分けて納付が出来る「延納制度」があります。
④社会保険料の計算・算定基礎届 (定時決定) 提出
労働保険と異なり、社会保険料は日本年金機構又は健康保険組合等が毎月計算する仕組みとなっています。実際の賃金額を使用すると計算が煩雑になるため、従業員それぞれの「1ヶ月に支給される見込の賃金額」を一定の幅(等級)にまとめた「標準報酬月額」という額を基に計算されます。
従業員が入社した際、残業代等、支払い額が最初から確定できない手当は、見込みの金額で「標準報酬月額」を登録します。
会社が提出する「算定基礎届」は、実際の賃金支給額をもとに、「標準報酬月額」を年に一度見直す(定時決定の)ための届出です。
4月から6月に実際に支給された賃金を届出ますので、この時期に残業代が増えれば「標準報酬月額」が高くなり、9月分保険料から向こう1年間の保険料額に影響します。
例えば、東京都の健康保険料率(介護保険料も含む)が11.82%、厚生年金保険料率が18.3%になりますので、「標準報酬月額」が2万円増えれば、会社負担額、従業員負担額、それぞれ一人当たり年間約3.6万円の増額となります。
⑤社会保険料の月額変更届 (随時改定)について
社会保険料は、④の定時決定以外に、年の途中に固定的賃金(基本給、通勤手当など毎月固定額で支給されるもの)が変動し、支給された月を含む3ヶ月間の平均給与月額から求めた標準報酬月額の等級が、現在の等級と比べて2等級以上変わった場合、標準報酬月額と実際の給与との間に大きな差が生じないように、標準報酬月額の改定を届出します。
令和5年4月は多くの鉄道会社で運賃や通勤定期券代が値上げとなりました。他にも、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられたため(法律改正)、4月1日以降、月60時間超の時間外労働があった場合は、月額変更届が必要な可能性がありますのでご注意ください。
労働保険の申告、算定基礎届などの届出について、お困り事がございましら、お気軽にご相談下さい。
尼崎市(伊丹市、西宮市)で経営革新等支援機関、税務相談、相続対策、記帳、決算書・確定申告書の作成をはじめ、会社設立、建設業許可申請、経営相談、融資相談まで幅広く対応できる税理士・行政書士の笠原会計事務所(電話06-6438-5450)にお気軽にご相談ください。詳細は以下のURLにアクセスしてください。