今回のテーマは「肩代わり融資の提案をされた時の対応」です。約3年続いた「ウィズコロナ」から「アフターコロナ」への転換を迎えた中で依然資金繰りに悩まれている事業者様は多いと思います。そこで新規の金融機関やメインバンク以外の既存金融機関等から魅力的な肩代わりの提案を受けた時にどの様な対応をすればいいのか、注意点を元金融機関職員の観点も交えお伝えをさせて頂きます。
【肩代わり融資とは】
「肩代わり融資」とは、A銀行の融資残高をB銀行で借り換えをすることです。肩代わり融資の提案は、銀行同士の顧客獲得競争のなかで行われるものです。よって借りる側にとっては、今よりも良い融資条件が期待できます。例えば既存借入金に対する金利より低い金利を提示される。また複数の既存借入をまとめて一本化することで毎月の返済額が軽減される。さらには昨今ガイドラインの見直しがなされている経営者保証についても外すことが出来る。など借りる側からすると、「魅力的」な提案であることが少なくありません。金融機関は特に3月の年度末に向け融資残高の増強を図る為、他行の融資残高の肩代わり攻勢が活発になっていきます。肩代わり融資は、B銀行の担当者は営業成績が上がり高く評価され、された側のA銀行にとっては、予期せぬ返済で利息収入がなくなってしまうことに加え、人事評価にも大きく影響する為、「他行肩代わりは銀行員にとって最大の屈辱」と言われています。
【肩代わり融資の提案をされた時の対応】
以上の内容から「銀行がやられて一番嫌なことが他行肩代わり融資」です。他行肩代わりをされた側の銀行とすると、「もうあそこには融資をしない。」という対応をされるリスクがあります。融資を受けている金融機関より同等のご提案をいただければ一番良いのですが、融資条件が通らなかった場合には非常に有効な方法であることも確かでありますので、既存金融機関との今後の関係性等を鑑みて慎重に検討する必要があります。
対応① 肩代わりの提案を受けたらすぐに提案書の作成を依頼する。
前述させて頂いたとおり、肩代わり融資は既存金融機関との関係悪化は避けられません。提案を受けた場合は必ず提案の内容を書面で依頼し、本当にいい条件の提案なのか慎重に確認しましょう。
対応② 既存取引金融機関に提案内容を書面で開示する。
肩代わり融資の提案内容が、既存取引金融機関との融資条件よりも良く資金繰りの改善につながる場合には肩代わり融資の提案の内容を、既存取引金融機関に伝えてみてはいかがでしょうか。肩代わり融資をされたくないと考えれば、肩代わり融資の提示条件に対抗するような提案をいただける可能性があります。しかしそれを上回る条件やおおむね同条件であった場合には肩代わり融資は避けましょう。逆に関係性がそもそも希薄であったり、取引銀行の対応が悪く自社の評価があまり良くないと判断できる時には肩代わり融資の提案を受け新たに関係構築していくのも良いかもしれません。
【まとめ】
資金繰りの改善とはいえ、肩代わり融資のリスクを考えると既存取引金融機関で今よりいい条件でご対応いただくことが理想です。いざという時困った時に助けてくれるのは親交の深い金融機関ですので肩代わり融資の提案をいただいた際には、金融機関との関係性に細心の注意を払い、自社の財務状況やリスクなどを天秤にかけ、慎重に対応をしましょう。
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