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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

神保町で、「冬休み本」の仕入れ(?)

2011年12月28日 | 本・新聞・雑誌・活字

新聞のコラムや時評、週刊誌の書評など、年内に書くべき原稿の仕事がすべて終わった。

おつかれさま、ワタシ(笑)。

そこで、この冬休みに読みたい、書評や仕事とは無関係の本を仕入れに、神田神保町へ。

九段下で地下鉄を降り、ゆるゆると歩きだす。



地上に出れば軍人会館、いや九段会館がそびえている。3月11日の震災では、天井が落ちて人が亡くなった。合掌。

この界隈をのんびり歩くのも久しぶりだなあ、と思いつつ神保町エリアに入っていく。



神田古書センター、田村書店、小宮山書店、少し回りこんで三茶書房。

結局、学生時代から立ち寄ってきた店に、いつも寄るわけです。

すずらん通りに入って、最初のお宝あり。



三省堂書店裏側の小さな広場のワゴンというか出店で、大量の三島由紀夫を発見してしまった。

何とほとんどが初版で、しかもいずれも1000円以下と安価なのだ。

さあ、大変(笑)。



入手したのは・・・・



『沈める瀧』中央公論社(昭和30年4月 初版)


『美徳のよろめき』講談社(昭和32年6月 初版)


『音楽』中央公論社(昭和40年2月 初版)


『対話・日本人論』番町書房(昭和41年10月 初版)


『わが友ヒットラー』新潮社(昭和43年12月 初版)


『命売ります』集英社(昭和43年12月 初版)


『対談集 源泉の感情』河出書房新社(昭和45年10月 初版)


『新潮 三島由紀夫読本』新潮社(昭和46年1月臨時増刊)


『蘭陵王』新潮社(昭和46年5月 初版)


『わが思春期』集英社(昭和48年1月 初版)


・・・・それぞれの本の感触に、時代がフリーズドライされているようで。

さらに、オマケのように(笑)、大江健三郎の初版も1冊見つけてしまった。


大江健三郎『日常生活の冒険』文藝春秋(昭和39年4月 初版)


勢いに乗って、そのまま三省堂第2アネックスビルに入り、エレベーターで5階の神保町古書モールへ。

ここでは開高健の、やはり初版本に遭遇してしまう。

1冊500円となっていて、それでも十分なのに、さっき三島本を購入した際に「御買物券」400円分をプレゼントされたので、名作2冊を計600円にて入手。

何だか開高さんに悪いみたいだった(笑)。


開高 健『夏の闇』新潮社(昭和47年3月 初版)


開高 健『ロマネ・コンティ・一九三五年』文藝春秋(昭和52年5月
初版)

かなり重くなった手提げ袋を持ちながら、すずらん通りを歩き出したのだが、ボヘミアンズ・ギルドでストップ。

店先の棚に「みすず書房」の本がどっと並んでいたのだ。

岩波書店の岩波茂雄や筑摩書房の古田晃などと同じく、みすず書房創業者である小尾俊人もまた、わが故郷・信州の生まれ。

「みすずかる信濃の国」なのです。

ま、それはともかく、みすず書房も良質の本が多いのだが、基本的には結構いい値段(笑)であり、学生時代には、そう簡単に手が出せなかったのを思い出す。

で、この“みすず棚”で見つけたのが、中野好夫の以前から気になっていた2冊だ。各300円也。


中野好夫『酸っぱい葡萄』(昭和53年10月 2刷)
中野好夫『人は獣に及ばず』(昭和57年6月 初版)

・・・・ということで、本日の“仕入れ”は終了。

大収穫に満足し、両手のずっしりとした重みと共に、地下鉄の駅へと向かいました。

やはり“古書ワンダーランド” 神保町は楽しい(笑)。

「家政婦のミタ」の40%、実はすごい数字

2011年12月28日 | テレビ・ラジオ・メディア
            (「国民的行事」だった最終回)

読売新聞「YOMIURI ONLINE」で、田中聡記者が書いた「今を読む」を読む。

ドラマ「家政婦のミタ」に関する分析だ。

文中、先日この最終回について、読売新聞でコメントしたものが引用されていました。

田中さんが言う通り、40%って確かに「すごい数字」なのです。


「家政婦のミタ」に見る日本人の現状
40・0%、というのはすごい数字なのである。

何がって? 21日に日本テレビ系で放送されたドラマ「家政婦のミタ」最終回の視聴率のことだ。この2、3回、20%台の後半を記録していたから、最終回で30%は超えるだろうとは思っていたが、まさかここまでとは。

民放ドラマ視聴率の40%超えは2000年、キムタクと常盤貴子が共演した「ビューティフルライフ」以来。つまり21世紀に入って初めての出来事、今世紀最大のヒットなのである。

40%超えがどのくらいすごいのか。過去5年間の全番組の視聴率と照らし合わせながら、もう少し細かく説明しよう。ちなみに数字はビデオ・リサーチ社、関東地区のデータを基にしている。

期間中、この大台をクリアした番組は、「ミタ」をのぞくと9本しかない。まず3本は大みそかの「紅白歌合戦」(2008年=42・1%、2009年=40・8%、2010年=41・7%)である。

残り6本は、すべてスポーツ中継だ。4本が昨年のサッカー・ワールドカップの日本戦(パラグアイ戦の第一部=57・3%、カメルーン戦後半=45・5%、オランダ戦=43・0%、デンマーク戦=40・9%)。

残り2本は2009年のワールド・ベースボール・クラシックの日本対韓国(40・1%)と同年のボクシング、内藤大助対亀田興毅(43・1%)。

同じサッカーでも今年あったアジアカップでは、準決勝の韓国戦35・1%、決勝のオーストラリア戦33・1%、と注目度が一枚下がる。ブームになった「なでしこジャパン」の最高は、五輪予選の韓国戦の後半、29・0%。

お母さんを亡くしたばかりの浅田真央ちゃんが優勝した25日の全日本フィギュアスケート選手権が26・7%。2008年の北京五輪開会式が37・3%……。

つまり、「家政婦のミタ」がたたき出した数字は、オリンピックやアジアカップを超えて、WBCやワールドカップに匹敵する。それは日本人にとって、「国民的行事」であったことを意味するものなのだ。

では、なぜこんな数字が出たのか。

24日の読売新聞夕刊で、上智大学の碓井広義教授は「最終回の視聴率が30%を超えるかどうかがインターネット上などでも話題になっていた。ドラマを見ないと言われる若い人たちが、話題のイベントに参加するような気持ちで視聴したのではないか」と分析している。

実際、フェースブックやツイッターでの情報拡散は、かなり派手だったようだ。話題が話題を呼んで、本来の力よりも1、2割増の数字が出たことは、容易に想像がつく。


ただ、その「水増し」部分をのぞいても、「家政婦のミタ」があげた数字は非常に高い。11月30日に記録した29・6%という視聴率は、件の最終回をのぞいても年間4位にあたる。ベースとなる人気はどこから来ているのか、を探らないと、「国民的話題」の根本は理解できないだろう。

崩壊しかかった家庭に、ロボットのように無表情な家政婦が入り込み、与えられた無理難題を顔色も変えずにこなそうとする――。このドラマのエッセンスを簡単に言うと、こんな風になるだろうか。

そこに現代社会のメタファーを見いだし、心理的なリアリティーを感じたからこそ、視聴者はこのドラマを見続けていたに違いない。

筆者が見たのはホンの数回に過ぎないが、印象に残ったのは異様に平板な画面と寒々しい雰囲気である。それはまるで今年、あちこちで聞かれた「絆」という言葉とは裏腹の、人間関係の希薄さと、それに対する不安と焦燥を象徴しているようだった。

仮面をかぶったような「ミタ」の顔。その裏側に、ひそかに人間関係に悩む日本人の現状が見えた気がするのは、私だけだろうか。

(読売新聞 2011.12.27)