goo blog サービス終了のお知らせ 

碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

テレビ界、この1年の総括

2011年12月27日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載中の番組時評「TV 見るべきものは!!」。

今回が年内最後の掲載なので、この1年をざっくり総括してみました。


テレビの劣化
一層進むのか、下げ止まるのか


2011年のテレビ界を振り返ると、あらためて3月11日の東日本大震災が大きな出来事だったことがわかる。

単純な話だが、停電すればテレビ自体はただの箱にすぎない。肝心なときに必要な情報をどう伝えるのか。

また原発報道では政府や電力会社が発表する情報をそのまま流す「発表報道」の限界も見えた。

テレビというメディアの存在意義や、意味さえ問われた1年だったと言える。

ドラマでは最後に話題を総取りしたのが日テレ「家政婦のミタ」だ。

震災以後、家族という当たり前の存在の大切さが見直された。

ミタ(松嶋菜々子)というミステリアスな“異形の者”を一般家庭に放り込むことで、家族の絆を浮き彫りにしたのだ。

今年は他にもフジ「それでも、生きていく」、TBS「生まれる。」、テレ朝「11人もいる!」など家族とその再生をテーマとしたドラマが目立った。

一方今年のバラエティは昨年以上の低迷が続く。

制作費削減は視聴者にもバレバレ。

お笑い芸人やタレントをスタジオに集めてのクイズや、「衝撃映像」と称する海外からの買い付けモノの羅列で何本もの特番が作られた。

昨年まで大活躍だった池上彰さんの露出が減ると同時に、知的エンターテインメント番組も激減したことが情けない。

さて来年。テレビの劣化は一層進むのか、それとも下げ止まるのか。

(日刊ゲンダイ 2011.12.26)