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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

言葉の備忘録50 サマセット・モーム『昔も今も』

2011年07月31日 | 言葉の備忘録

今、凝っているのが、サマセット・モームの小説。

どういうタイミングか、読みやすい新訳が出てきたことがきっかけだ。

「お菓子とビール」(行方昭夫・訳)が岩波文庫で、「昔も今も」(天野隆司・訳)がちくま文庫から。

16世紀のイタリアを舞台に、あのマキャベリを主人公とした「昔も今も」を読み終わったのだが、これがすこぶる面白かった。

ストーリーはもちろん、人間に対する鋭い観察・洞察、会話の妙、独特のユーモアに唸らされる。

開高健さんが繰り返し愛読したというのも納得。

この後、「お菓子とビール」を読んだら、次は「人間の絆」や「月と6ペンス」も読み直してみたい。

明日から8月だ。

サマセット・モームの夏。

ちょっといいかもしれない(笑)。



このイタリアには、自分の眼でしかと確かめたうえでなければ、他人を信じるような愚か者は一人もいない。

賢者はもてる卵をすべて一つの籠にいれておきません。

人が後世に記憶されるのは、その偉大な行為によってではありません。文筆家がその行為を記述する見事な文章によって記憶されるんです。

幸運の女神は、いかに好機をつかみとるか、その方法を心得ている者を寵愛される。

―――サマセット・モーム『昔も今も』


『週刊新潮』で、NHK「パソコン受信料」についてコメント

2011年07月31日 | メディアでのコメント・論評

NHKの諮問機関が発表した「パソコンからも受信料」は、なかなか衝撃的。

さっそく『週刊新潮』が記事にして、そこでコメントをしています。


ついに地デジ化でNHKを待つ
「受信料」日照り


7月25日午前0時、テレビは地上デジタル放送へと完全移行した(被災3県を除く)。

松本正之・NHK会長と広瀬道貞・民放連会長は揃って記者会見に臨み、順調な切り替えを強調してみせた。

が、テレビを取り巻く環境は“順調”とはいえない。

「若い世代のテレビ離れが進み、ネットを使う時間が明らかに増えています」と、放送記者が解説する。

「NHKの調査では、10代男性の土曜日のテレビ視聴時間は、昨年が2時間34分と、5年の間に50分以上も減った。ネットは1時間5分と、倍以上に。動画サイト自体が“生中継”する番組も増えています」

そもそもテレビを持たない若者が増えている。

「今のパソコンには地デジチューナーが組み込まれているものが多く、一人暮らしの大学生などは、必要ならそれでテレビを見ているのです」(IT評論家)

NHKの受信料が干上がる? 受信料は、NHKが映るテレビがあればこそ、支払い義務が生じるからだ。

で、地デジ化の陰で、ひっそり報じられた記事に注目。

「パソコンからもNHK受信料を、という“衝撃的”なものでした」と、先の記者。

「昨秋から“フルデジタル時代における受信料制度のあり方”を、NHK会長の諮問機関が検討していた。その答申が出て、テレビ番組のネットへの同時配信の必要性を認め、受信するパソコンからも受信料を徴収すべし、とあったのです」

上智大学の碓井広義教授(メディア論)は、「NHKはネット配信をお金になる事業として組み込もうと考え、パソコンからも受信料を、とまずアドバルーンをあげてみたのではないでしょうか」

が、観測気球は若者の反発で火ダルマに。しかも同時配信には、まず放送法改正が必要。日照り近づく?

(週刊新潮 2011.08.04号)


・・・・別のメディアからも、この件に関して論評を求められていますので、整理した上で原稿を書くつもりです。