今、凝っているのが、サマセット・モームの小説。
どういうタイミングか、読みやすい新訳が出てきたことがきっかけだ。
「お菓子とビール」(行方昭夫・訳)が岩波文庫で、「昔も今も」(天野隆司・訳)がちくま文庫から。
16世紀のイタリアを舞台に、あのマキャベリを主人公とした「昔も今も」を読み終わったのだが、これがすこぶる面白かった。
ストーリーはもちろん、人間に対する鋭い観察・洞察、会話の妙、独特のユーモアに唸らされる。
開高健さんが繰り返し愛読したというのも納得。
この後、「お菓子とビール」を読んだら、次は「人間の絆」や「月と6ペンス」も読み直してみたい。
明日から8月だ。
サマセット・モームの夏。
ちょっといいかもしれない(笑)。
このイタリアには、自分の眼でしかと確かめたうえでなければ、他人を信じるような愚か者は一人もいない。
賢者はもてる卵をすべて一つの籠にいれておきません。
人が後世に記憶されるのは、その偉大な行為によってではありません。文筆家がその行為を記述する見事な文章によって記憶されるんです。
幸運の女神は、いかに好機をつかみとるか、その方法を心得ている者を寵愛される。
―――サマセット・モーム『昔も今も』