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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

映画と青春は相性がいいのだろうか

2008年08月23日 | 映画・ビデオ・映像
原稿の仕事を終えて、急ぎ映画館へ。クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』である。

主演は、これがバットマン2本目となるクリスチャン・ベールだ。敵役のジョーカーを演じたヒース・レジャーが急死したことも話題となった。

見終わっての読後感?は・・・うーん、暗い。

かなりシンドイ内容。何しろバットマンが悩んでいる。なぜなら、悪を倒しているはずのバットマン自身が、「無法者」と呼ばれてしまうのだ。それじゃあ、本人は辛い。

「正義の暴力」と「悪の暴力」のボーダーはどこにあるのか。ゴッサムシティでは、バットマンとジョーカーは、まるでコインの裏表のような存在となってしまう。

とはいえ、見せ場はふんだんにある。フェラーリの装甲車版みたいなバットモービルや、巨大タイヤに跨ったような特殊バイクのバットポッドで疾走するシーンなどだ。これは唸るくらいの迫力。爆破もビッグサイズだ。

そして、戦闘シーンのスピード感、緊張感が強ければ強いほど、一人になったときのバットマンの孤独も深いように見えた。

一方、見ていてホッとするのが、豪華な脇役の面々だ。渋い執事役にマイケル・ケイン。バットマンを機材関係でサポートしてくれるのがモーガン・フリーマン。信頼できる刑事、ゲーリー・オールドマン。みんな、いい雰囲気の役者ばかりで、「バットマン」という架空世界を厚みのあるものにしている。

悩むバットマン。精神的に苦しむヒーロー。まだまだ次回作もあるはずだが、どうなっていくんだろう。だが、こういうヒーロー映画もあっていい。


映画評論家・品田雄吉さんの新刊『シネマの記憶から~名優・名監督と映画評論家の五十年』(角川マガジンズ)が出た。

1930年生まれ。映画評論界の長老が回想する映画と人生だ。1939年製作の『風と共に去りぬ』から、スピルバーグ監督の『宇宙戦争』まで、52本の名作や傑作が語られる。

品田さんの、時系列による選定作品は、以下のようなものだ。

1)1939年~
 『風と共に去りぬ』『カサブランカ』『誰が為に鐘は鳴る』など

2)1951年~
 『禁じられた遊び』『生きる』『雨に唄えば』『ローマの休日』など

3)1961年~
 『ウエスト・サイド物語』『ティファニーで朝食を』『大脱走』など

4)1970年~
 『ある愛の詩』『家族』『ゴッドファーザー』『惑星ソラリス』など

5)1980年~
 『E.T.』『ターミネーター』『プラトーン』『ダイ・ハード』など

6)1990年~
 『ホーム・アローン』『ゴースト/ニューヨークの幻』『ミザリー』など

この本に登場する52本を確認すると、封切館と名画座を併せて、全部、映画館で見てあった。ちょっと嬉しい。

さらに、品田さんは、個人的な「洋画邦画 史上ベスト・テン」を選んでいるが、そのラインナップは「青春時代に見て感動した作品が多い」そうだ。

続けて「映画と青春は相性がいいのだろうか」と書かれているが、うん、そうかもしれない。私もそうだが、青春時代にハマッた映画は、ずっと忘れない。そして、その作品は、意識するかどうかはともかく、どこかで価値観や生き方にまで影響を与えているような気がするのだ。

シネマの記憶から―名優・名監督と映画評論家の五十年
品田 雄吉
角川マガジンズ

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