昨日の夕方、キャンパスからの帰り道。まだ空全体に、ほのかに明るさが残るのに、一方の山側には真っ黒な雲。おお、っと思う間に閃光。雷鳴。続いて雨だ。電車に乗ったときには豪雨になった。これがニュースでいう「局地的な雷と豪雨」なのだろうか。まあ、凄まじいこと。
しかし、車内では、読みかけの小説があと少しでラストというところであり、これに集中した。翔田寛さんの『誘拐児』(講談社)だ。さすが今期の<乱歩賞受賞作>、雷雨に負けないインパクトがある。
物語は、昭和21年から始まる。誘拐事件が発生するのだ。わずか5歳の男の子がさらわれ、犯人は100万円を要求。学生アルバイトの日当が30円の時代だから、大金といえる。
身代金の受け渡し場所は、まだ敗戦の混乱が残る有楽町駅前の闇市だ。万全の体勢でこれに臨んだ警察側。ところが、人ごみの中で犯人に金を奪われ、取逃がしてしまう。子どもは、結局、戻ってこなかった。そして15年後が過ぎた。
昭和36年、ある女性が惨殺される事件が起きる。いくつかの手がかりはあるものの、捜査は難渋。しかも面白いのは、事件の解明に挑んでいたのは刑事たちだけではなかったことだ。
やがて、思いもしなかった形で、かつての誘拐事件が再浮上してくる・・・。
「新人離れした」とは、よくいわれる言葉だが、地に足のついた、堂々のストーリーテリング。選考委員の大沢在昌氏、東野圭吾氏が推しているが、その資格は十分にある。
昭和30年代半ばの雰囲気を、懐かしさと共に味わいつつ、謎解きに加えての人間ドラマを堪能した。
ちなみに、「誘拐児」という言葉、私はあまり聞きなれなかったが、「誘拐犯」に対して、「誘拐された児童」を指す。って、当たり前か。でも、重要な意味を持つタイトルなのだ。
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北京五輪では、ソフトボールチームが金メダル。おめでとう。よく頑張りました。でも、ソフトボールって、次のロンドン五輪からは消えてしまうそうだ。
というか、五輪の競技が無くなったり、増えたりすること自体に、「ふ~ん、そうなんだあ」と、恥ずかしながら、びっくりした。