『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

・常連のセレモニー(上)/天ぷら『ひらお』

2011年09月21日 12時13分53秒 | ■つれづれに(日記)


 福岡に『ひらお』という「天ぷら」の専門店がある。眼の前で「揚げたて」を食べさせてくれる、地元ではよく知られたお店だ。とは言っても、セレブ用の高級店ではない。庶民感覚の店であり、サラリーマンから高齢者、それに恋人、夫婦、家族連れと客層が広い。日曜祭日の夜など、ファミレス感覚の家族連れで賑わう。

 この店はわが友《アドリブログ》のセラビ―氏との行きつけの店であり、今年はほぼ月に1回のペースで出かけただろうか。このあいだの日曜夜も、二人で「早良店(さわらてん)」へ行ったばかりだ。

 市内近郊に、本店他5店の系列店があるという『ひらお』――。店内はどこもほぼ同じようなレイアウトで統一されている。仕込みや調理場から完全に分離した「客席」部分は横に長い。「早良店」の場合、「天ぷらを揚げるコーナー」が両サイドにあり、全部で34、5の「カウンター席」に囲まれている。そのいずれの「席」からも天ぷらを揚げる様子を眺めることができる。

 「客席」はすべてカウンターであり、テーブル席は一切ない。店内の「周囲」に壁を背にした「順番待ちの席」が設けられ、多いときは「立ち待ち」を含めて40~50人が待っている。だが待ち時間は意外に短く、「立ち待ち」が出ても20分以上待つことはないようだ。順番が繰り上がるたびに移動して進むわけだが、この「順番待ちの席」からも「天ぷら」を揚げる様子がよく判る。と同時に、食事をしている顧客の動きも見渡せる。

       ☆   ☆   ☆

 何と言っても、この店は“うまい”し、“はやい”。そのうえ価格が“リーズナブル”と来ている。筆者の定番でもある人気メニューの「お好み定食」は780円。小さな「どんぶり飯」に「味噌汁」、それに「天ぷら」は、白身魚、豚、エビ、イカにナス、ピーマン、かぼちゃと七品の具材がつく。

 しかし、この店の最大の魅力は、筆者の“DNAの源泉”とも言うべき「イカの塩辛」が食べ放題ということにある。だがセラビ―氏も、実は筆者に負けず劣らず「イカの塩辛」大好き人間だ。もしも『ひらお』にこの「イカの塩辛」がなかったなら、二人がこの店にこだわる理由はなかっただろう。

 われわれは、今やすっかり『ひらお』の“常連”と言える。なぜなら、“常連”の行動には共通した“暗黙の行動”が見られるからだ。ところでこの場における“常連”の定義は、セラビ―氏のような一部の青年を除けば、“おおむね”というか“ほとんど”が「チューネンオヤジ」ということになるだろう。

 ともあれ、まず“常連”はカウンターに着くなり、当然のように2枚の「小皿」を自分の事実的支配領域に引き寄せる。次にこれまた当然のように、そのうちの1枚に「イカの塩辛」をしっかりと盛り付け、残ったもう1枚の皿に、数種の中から選んだ漬物などを取り分けるというもの。

 この“一連の行動”は、黙々としかも流れるような動作に基づいて行われる。そこには一縷の無理も無駄も、そして寸分の躊躇もない。しかもこのような“一連の行動”は、何も筆者とセラビ―氏だけにとどまらないのだ。あたかもそれが長年受け継がれて来たこの店の“伝統的なセレモニー”でもあるかのように、カウンターのあちこちで静かにかつ整然と行われている。

 そしてこの“セレモニー”が終了する頃、タイミング良く「ご飯」と「味噌汁」が運ばれて来る。だが“常連”にとっては、実はここからが“本番のセレモニー”となる。それは「イカの塩辛」を、「ご飯の最初の一口」とともに食べるということだ。つまりは「揚げたての天ぷら」が運ばれて来るまでの、いわば“前座のセレモニー”となっている。
 この“前座”の盛り上がりがあればこそ、“揚げたて天ぷら”との“美味なる遭遇”が、胃袋に“感動的なクライマックス”をもたらすのだ。

 ……てなことを考えているうちに、エントリーNo.1の「天ぷら」が揚がったようだ。目の前の「銀バット」に「白身の魚」がのせられる。「イカの塩辛」によって誘い出された食欲がぐんと増し、胃袋との本格的な臨戦態勢が整う。 よっしゃあ~!   (続く)

       ★   ★   ★


 ※「銀バット」:「揚げたて天ぷら」をのせるスチール製の容器すなわち「バット」。「銀色」であるところから、同店では『銀バット』と呼ぶとのこと。


コメント (4)    この記事についてブログを書く
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4 コメント

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Unknown (セラビー)
2011-09-21 21:53:40
うほー。お隣りで食べていましたが花雅美さんがこんなこと考えながら食べているとは気付きませんでした。

「常連の儀式」は天ぷらを迎え入れるセレモニーですよね。1皿には「イカの塩辛」。2皿目には「かぼちゃ」だったのに引退か? 先日は新人君でした。
驚異の新人についても次の記事では書いてくださ~い。楽しみにしています。
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常連の儀式 (秀理)
2011-09-23 10:01:41
もちろん「天ぷら」を迎えるための儀式です。それにしても、「天ぷら」と「イカの塩辛」はよく合いますね。
返信する
われも“常連”? (ひゅう太)
2011-09-23 10:28:02
気付けばわたしも“チュウネンの常連”ということのようです。“シオカラ兄弟”ということでしょうか。
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シオカラ兄弟 (秀理)
2011-09-24 07:48:19
「シオカラ兄弟」とはいいですね。さっそく使わせていただきます。ありがとうございます。
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